最近になって存在が確認され、ときおり集団感染を引き起こすE型肝炎ウイルスは、すでに約100年前には国内に侵入し、“土着化”していたことが、厚生労働省研究班(主任研究者・三代俊治東芝病院研究部長)の調査研究でわかった。
富国強兵政策の一環で、軍人の体力をつけるため英国から輸入したブタによって持ち込まれ、肉食文化の普及で全国に拡大したらしい。
E型肝炎ウイルスは遺伝子の特徴から1〜4型があることが知られ、時間の経過とともに変化していく。遺伝子の変化を調べることで、ウイルスの歴史、移動、系統関係などがわかる。
同班の溝上雅史・名古屋市大教授らは、国内と世界各地で見つかったE型肝炎ウイルスの遺伝子を比較した。国内のウイルスは大きく分けて3型と4型の二つのグループが混在し、いずれも約100年前に、起源となるウイルスが国内に侵入したことがわかった。
国内で主流の3型は、ヨーロッパや米国など、19世紀に英国と交易が盛んだった国々に多い。日本も1900年ごろに、軍人の体力強化のために英国からブタを大量に輸入した。ブタのE型肝炎ウイルス保有率は非常に高いことから、研究班は、ブタがウイルスを持ち込んだ可能性が高いと断定。肉食文化の普及で、ウイルスが土着したとみている。E型肝炎ウイルスの感染経路は、ブタやシカ、イノシシなどの肉の生食によるものと分かってきた。しかし数年前まで日本のE型肝炎のほとんどは、インドなど海外で感染したものと考えられていた。
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E型肝炎は「人獣共通感染」と言われる特殊な経路で感染します。豚の内臓の生食やシカやイノシシの肉を生食することが感染源になります(つまり経口感染です)
潜伏期間は約40日。発熱、全身倦怠感、食欲不振で発症。濃染尿や黄疸が続きます。ですが慢性化することはありません。一過性の感染です。劇症化例は、国内ではまだ不明ですが、インドでは妊婦の10〜20%が劇症化するというデータもあるようです。
参考メモ
【急性肝炎】
肝の急性の炎症。多くは一過性であるが、一部は慢性肝炎や劇症肝炎へ移行する。
【劇症肝炎】
発症後8週間以内に高度の肝機能異常、肝性昏睡II度以上を来たし、プロトロンビン時間が40%以下であるものを指す(第12回犬山シンポジウム 1981年)。
・急性型
発症してから脳症出現までの期間が10日以内
・亜急性型
発症してから脳症出現までの期間が11日以降
・LOHF (Late Onset Hepatic Failure)
発症後8週以降、6ヵ月未満に肝性昏睡II度以上、プロトロンビン時間40%以下を示すものを指す
【慢性肝炎】
6ヶ月以上の肝機能異常とウイルス感染が持続している状態