2006年04月01日

大動脈瘤の手術は医者にとってもハイリスク

9800万円賠償命じる 大動脈瘤の手術ミス

 大動脈瘤(りゅう)の手術ミスで夫=当時(68)=を死亡させたとして、愛知県の妻らが豊橋東病院(現豊橋医療センター)を運営する国立病院機構に、計約1億200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁の佐久間邦夫裁判長は30日、医師の過失で死亡させたと認め、約9800万円の支払いを命じた。

 佐久間裁判長は判決理由で「人工血管を挿入する際に医師が注意義務に違反し、過度の力で押し入れたため、動脈壁が破れた」と述べた。

 判決によると、男性は2001年8月、胸部大動脈瘤の治療で、人工血管を挿入する手術を受けた。手術中に動脈が損傷して出血性ショックを起こし、同9月に死亡した。

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 む・・・これまた医者にとって厳しい判決。確か、胸部大動脈瘤の手術は腹部の大動脈瘤の手術よりリスクが高く、10%ほどは合併症を呈してしまうのではなかったでしょうか。元々動脈は損傷しやすいほどに膨らんでいたのだとは思いますが、うーむ…。確かに慌てず冷静に判断して対処していれば、起こらなかったことかもしれません。難易度の高い手術であるということをふまえつつ、冷静に、臨機応変に対応できるということが外科医の素質というのでしょう。あとは経験ですからね。才能ある外科医とは、そういうものだと思います。

 以下は、腹部大動脈瘤の手術ミスで死亡したというニュースです。こちらは上記と異なり腹部。検査が進歩したこともあり、未破裂の腹部大動脈瘤は対処しやすくなりました。手術による死亡率も大きく下がって2〜3%未満です。しかし…。

 人工血管置換術の場合、大きな血管を遮断するため、長い間止めていると他の臓器に血液がいかず臓器がヤラれてしまいます。そのため素早い縫合スキルが医師に求められるわけです。しかし今回の事件ではリミットを越えるほどてこずってしまったために起こってしまいました。複雑な縫合をしたのは医師の自己満なのか、それとも出血を防ぐ縫合のために必要だったのかは定かではありません(というよりそこが争点となるのでしょうが)。

 近年、「ステントグラフト内挿術」という方法が行われつつあるようです。ステントグラフトとは要するに人工血管に金属のコイル状のものを巻きつけたようなもので、それを血管内部に入れてやることで血液の圧力から血管をフォローしてやることができます。低侵襲なため術後の回復が早く、更に重篤な全身合併症は少なくなるのが特徴です。

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「県立中央病院の手術過誤で死亡」 遺族が1億2000万円求め /香川

 県立中央病院(高松市番町5)で同市内の男性(当時62歳)が腹部の大動脈りゅうの手術を受けた際、医師が適切な処置を怠ったため死亡したとして、遺族が28日までに、県を相手取り約1億2000万円の損害賠償を求め、高松地裁に提訴した。

 訴状によると、男性は05年2月、同病院で腹部の大動脈りゅうを人工血管に置き換える手術を受けた。しかし、執刀医が計画を変更して複雑な血管の縫合作業するなどしたため、手術が長引いて臓器に十分な血液が行き渡らず、6日後に多臓器不全で死亡した。

 原告側は「手術前の検査で危険性を予見できたのに、誤った手術計画を立案したうえ、早期の段階で血流を確保するなどの医師としての注意義務を怠った」と主張。同病院の高木孝征事務局長(52)は「医療ミスとは認識していない。訴状をよく読んだうえで対応を検討したい」としている。

参考:科学のつまみ食い
    科学のつまみ食い(2)
    心臓血管外科最前線
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posted by さじ at 01:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 循環
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