事故などで亡くなった人の遺体を検案、解剖して死因を明らかにする監察医が多摩地区にいないことから、都福祉保健局は十七日から警視庁立川署管内(立川、国立市)に監察医を派遣するモデル事業を開始する。
死因不明の遺体の場合、警察の検視で事件性がないと判断されれば、医師が死因を判定する。外から見る検案だけで死因が分からなければ解剖する。政令では都区部、大阪市、名古屋市、神戸市、横浜市に監察医を置くことができると定められ、都内には文京区に都監察医務院がある。
多摩地区や島しょは、同医務院の担当区域外で、死因判定が必要な場合は、地域の医師会に「検案医」として登録された医師が検案を、大学の法医学教室の医師が解剖を、都の要請で行う。
都によると、昨年の検案数は二十三区が一万二千二十二件、多摩・島しょ地区はその半数近くの五千二百八十五件。死因解明のため解剖されたケースは、二十三区が21・2%(二千五百五十三件)だったのに多摩・島しょはわずか4・1%(二百十七件)。
多摩・島しょで解剖例が少ない理由ははっきりしないが、「遺族の理解を得る説得の技術や、正確な判断を追求する姿勢で、監察医と検案医に差があるのでは」と都福祉保健局はみている。
さらに、検案医はほとんどが地域の開業医で、診療科も内科、外科などさまざまで、死因を追究する業務に専従する体制にない。こうした点から同局は、多摩地区では解剖すべきケースで解剖せず、不正確な死因判定が行われていた可能性もあるとみて、派遣事業を検討、実施が決まった。
法医学という学問は非常に面白いのですが、日本においてはなかなか理解を得るのが難しいと思います。異状があるかどうか分からない遺体を解剖して死因を究明するわけですから、遺族にとってはあまり気持ちのよいものとはいえない。
しかし解剖することで、非常に多くの情報が得られ、どのようにして死んだのか、原因はどこにあったのか、いつ死んだのかなどが分かるようになります。実際何でもない事例であっても、思わぬところに原因があったりするものです。
真相を追究し続けるのが法医学の良いところです。残念なことに監察医制度は現在5地域でしか行っていません。本来ならば全国で実施しなければいけないんでしょうけども。
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