さきごろ『病気に強い人、弱い人』(幻冬舎)を書いた感染免疫学の第一人者で東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎さん(68)は、「生活環境そのものが病気にかかりやすくした」と指摘する。病気になったことがないという藤田さんに、病気をしないで安心して暮らせる方法を聞いた。
「現代人はきれい好きが行き過ぎて、体を守ってくれる腸内細菌まで減らし、免疫力が低下しています。だから病気になりやすい」
藤田さんは風邪など病気にかかりやすい人は腸内細菌に問題があると指摘する。
たとえば社会問題になった病原性大腸菌O157の流行。「O157は生命力は弱いのですが、腸の中に敵となる菌がいないから大きな顔をする。腸にさまざまな細菌が棲み着いていれば感染しても軽い下痢程度で済んでしまいます」
藤田さんは調査で仲間の研究者らとしばしばインドネシアに行くそうだが、「若い研究者はエルトール・コレラ菌による下痢ですぐダウンしてしまいます。腸内に大腸菌がいっぱいいれば追い出してしまうヤワな菌で、いつもわたしはへっちゃらです」と話す。
生活環境にはさまざまな抗菌、除菌グッズがあふれているが、腸内細菌を減らしているのが極端な清潔志向だという。
「文明が人間の力を弱めている。子供は室内でゲームばかりさせないで、外で泥んこ遊びをさせた方がいい。無菌状態化しているからアレルギーなどの問題が生じる。菌に棲んでもらった方がいい」
実際小さい頃から少々汚い環境で過ごすというのはまぁアリといえばアリでしょうね。別に無理やり汚れろってことではないのですが、小さい子供に抗菌グッズを持たせるとか、過剰なまでに殺菌するような身体の洗い方をするとかは、逆効果です。将来皮膚や免疫能が弱くなる可能性もあると思います。
身体の中も外も、全てにおいて菌が埋め尽くされているのが「健康な人」です。大腸菌が腸内にいてくれるから、他の菌が入ってきても腸がやられずに済むわけです。菌とは共存姿勢でいるほうが、より健康的ですね。
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