医学部の学生で過去に産婦人科医を志したことのある人は全体の29%いるにもかかわらず、現在第一志望にしている学生は全体の4%、第三志望まで含めても14%にとどまり、多くは「勤務実態」や「訴訟リスク」を理由に挫折していることが十五日、横浜市立大の医学部学生が実施した調査で分かった。
志望しない人が「産婦人科医になってもいい条件」として挙げたのは「適正な当直回数」や「刑事責任に問われない」が多く、医療を取り巻く厳しい環境が学生の進路希望にも影響し、産科医不足に拍車が掛かる状況が浮き彫りになった。
産婦人科を目指したことがあるとしたのは一年20%、二年18%、三年25%、四年37%、五年32%、六年47%と学年が上がるほど高率。理由として「命の誕生という感動にかかわることができる」「時代や国を問わず必要とされる」などが挙がり、六年は「実習で楽しかった」も目立った。
しかし、一度は産科医を志望した学生の約半数が進路を変更。その理由として勤務実態(当直回数、勤務時間、育児との両立困難)や訴訟リスクが高いことが挙がった。
シンポジウムでは、結果を基に、学生が現場の医師らと意見交換。産科医不足を実感したことがあるかなどについて、妊産婦約百人に実施した調査結果も発表する。企画した医学科三年の武部貴則さん(20)は「問題の改善には、医師や行政だけでなく市民にも果たす責任がある。患者と医師の間に立つ学生の考えを伝え、医師不足などについて考え直すきっかけになれば」と話す。
思うに、産婦人科医になる人を増やしたいのであれば、「労働基準として適正な当直回数」とか「実労働時間に準じた賃金の支払い」もしくは「労働基準をはるかに超えても、他の診療科の医師と同等の勤務時間」などを認めればいいんだと思います。
挙げてみるとわかりますように、この主張は至極真っ当なものです。むしろ認められていない現状が、人権侵害に近いものだと思います。医師は奉仕しなければいけない、という理念を逆手にとって、国民が総出で産婦人科医を迫害しているにすぎません。
親が医者だからとか、成績のいい高校だったからとかいう理由で医学部に入って医者になったような人は知りませんが、少なくとも医学に興味を持った人ならば、産婦人科のやりがいや臨床の面白さはわかると思います。ですが医学に興味があるのですから、他の診療科も同様に興味が沸くわけです。例えば癌診療とか。
で、どこに行こうかなーと考えたときにですよ、現状の産婦人科がありえないような劣悪な労働条件で、しかも患者に恨まれて訴訟までされるというリスクがあるような科に、行こうと思いますか。強力な動機や、やり甲斐を見出さない限り、医学生を集めるのは厳しいと思います。
動機ややり甲斐があって産婦人科に進んで、頑張ってやっていこうとしても、現実は厳しく、理想だけじゃ太刀打ちできないほど疲弊してしまい、産婦人科医が次々辞めてしまう事態に陥っています。もはや医者が頑張ってどうにかなるレベルではない、ということを国民に理解してもらわない限り、どうにもなりませんね、これは。
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