事故などで脳を外傷し、最小意識状態が長く続いた患者の脳の「視床」という部位を電気で刺激することにより、意識レベルと行動の改善が見られたとの報告が雑誌『ネイチャー』に掲載された。
被験者になったのは6年以上前に脳を損傷した38歳の男性。最小意識状態とは、完全な植物状態ではなく、ものを見たり聞いたりするような反応が少しだけ見られるような状態である。
この治療はおよそ500日にわたる長いものだった。まず初めに、視床に電気刺激のための電極を埋め込む手術を行う。この視床という部位は、脳全体の活動性・反応性を制御し、信号を送っている大事な部位である。しかし視床は、脳の中でも深いところにあるため容易な手術ではなかったようである。
その後、数十日リハビリを行ったが、特に脳機能に改善は見られなかった。ここから数日間、定期的な電気刺激を開始したところ、行動の劇的な改善が観察されたという。運動機能や会話能力などが特に顕著だったそうである。さらに数週間の刺激を続けたところ、コップの水を飲めるほどにまで回復したという。さらには運動神経だけでなく、コミュニケーション能力も向上した。
この治療は一人の患者にしか行われていないので、誰にでも通用する夢の治療法となるかは今のところわかっていない。実際に治療を行った研究グループも、「あくまでも今回の報告は一人の患者さんの報告であり、より重篤な障害の場合などに効果が期待できるかはわからない。また仮に意識が改善されても、別な人格になってしまう可能性もあるかもしれない。倫理的な面から見ても、脳に電極を埋め込むのは必ずしも賢明とは言えず、過度に誇張されるべきではない」という慎重な姿勢を見せている。
うーむ。危ない実験ですなー。研究グループもそこらへんは自覚してやってるみたいですが。脳が情報を統合したり蓄積したりしているのは、いわば電気あってのものなので、理論的には電極でなんとか出来ますが、実際にどこに埋め込んでどれだけの作用が出るかってのは、脳の機能全てが解明されなければ難しいような気も…。
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