政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は15日の会合で、健康保険が適用される保険診療と適用されない自由診療を併用した「混合診療」について、全面解禁するよう厚生労働省に求める方針で一致した。
国が混合診療を原則禁止していることを違法だとする7日の東京地裁判決を受けたもの。規制改革会議は厚労省との交渉を経て、年末にまとめる第2次答申に盛り込むことを目指す。
会合では、混合診療の全面解禁を求める理由として、〈1〉一部の富裕層のみが自由診療で最先端の医療を受けており、医療の格差が生じている〈2〉混合診療を解禁すれば新しい治療法や薬を試みやすくなり、患者の治癒の可能性が飛躍的に高まる――ことなどを挙げた。
混合診療は、健康保険が適用される治療と適用されない自由診療を組み合わせて行う診療方法。一部の先進医療などを除き原則として禁止されている。日本では承認されていない抗がん剤などを使った場合、入院や検査など通常、保険の対象となる医療を含めてすべて患者の自己負担となる。
全面解禁をめぐっては、舛添厚生労働相が、東京地裁判決に対し控訴する方針を表明しており、規制改革会議と厚労省の交渉も難航が必至の情勢だ。
規制改革会議の前身である「規制改革・民間開放推進会議」は2004年12月に出した答申で混合診療を例外的に認めている診療範囲の拡大を求めている。
確かに混合診療を承認すると、使える治療や薬選択肢が大幅に広がるという強烈なメリットがあります。現状では、保険適用されていない薬を1つでも使うと、他の治療全部が保険適用外となり、高額な医療費全額を個人が払わなければならないという悲劇になります。
しかし、大きな落とし穴があります。混合診療を適用してしまうと、薬や治療法が保険適用されにくくなるのではないかという懸念です。
日本は新薬承認が他の先進国に比べて遅いといわれています。実際遅いんですけど。厚生労働省的には、承認した薬で、問題が露呈したときのバッシングを恐れて、あまり承認したがらないというのもあるでしょうし、医療費の問題もあるのでしょう。
折りしも、今の政府はヤレ医療費削減だ削減だと声高に叫んでいます。ただでさえ激務な医者の診療報酬を下げろとのお達しまでもおこる始末です。こんな守銭奴的政策ばかり取っている体制で、混合診療を認めてしまったら?新薬承認を強く進めなくても、構わないではないかということになってしまう可能性があります。たとえ混合診療が承認される条件として、「厚生労働省が新薬承認に手を抜かない」というものを加えたとしても、守るはずがありませんよね。そんなことは今までの歴史が証明していることです。
そもそも、混合診療で用いられる保険適用外の薬というのは、効果があるから使われるわけですよね。それならば(効果があるならば)早急に保険適用すべきだというのが日本医師会、医師、患者である国民の主張であって、はっきりいって混合診療というものは、役人の怠慢を誤魔化すための代替策に過ぎないと思います。
勿論、現実には患者は効果があるんなら使いたい、逆に言えば役人はあてにならないから自分で輸入したいと考えているわけですから、混合診療は必要といえば必要なのでしょうけれども。
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