太平洋戦争末期、九州帝国大学(現九州大学)で米兵捕虜8人が実験手術を受けて全員死亡した「九大生体解剖事件」の“最後の生き証人”とされる福岡市の東野産婦人科会長、東野利夫さん(81)が7日、同市博多区のホテルで講演した。人間の狂気を呼び起こす戦争の恐ろしさを語る一方、「事件が風化し、歴史の教訓が忘れられようとしている」と指摘し、憲法改正の動きを批判した。
東野さんは医学部入学後、解剖学教授の雑用係をしていて事件を目撃。「負傷兵の治療をすると思ったら、片肺を切除しても生きられるか実験したり、血を抜いたりしていた」と証言した。
また、代用血液の実験で博多湾の海水を捕虜に注入する器具を持たされた体験も語り「息が詰まる異様な雰囲気だったが、本土決戦目前で悲壮な覚悟があった。戦時中の空気を知らないと理解できないだろう」と強調。聴衆を見つめ「戦争は悲惨と愚劣しか残らない。事件を2度と戦争をしないための歴史的教訓としてほしい」と訴えた。
九州大学生体解剖事件。日本の医学部のなかの大事件の1つです。
詳しくは、遠藤周作の「海と毒薬」、もしくはこちらで。