運動神経が破壊され、筋力が低下する難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)は、脊髄でアミノ酸の一種「D―セリン」が過剰に作り出されて進行することを、慶応大医学部の相磯貞和教授(形態形成学)らのグループが突き止めた。
新たな治療薬の開発につながる成果で、英科学誌に発表した。
ALSに伴う神経の破壊は、情報伝達物質であるグルタミン酸が過剰に神経を興奮させるために起きるとされている。このグルタミン酸の過剰興奮の一端を、神経細胞に栄養を与える「グリア細胞」が作るD―セリンが担うことも知られていたが、その仕組みは不明だった。
相磯教授らは、ALSを発症させたマウスや、ALSで亡くなった患者の脊髄を分析。病気が進行するにつれてグリア細胞が増え、D―セリンの濃度が脊髄の中で高まった結果、グルタミン酸が神経を破壊する働きも強まっていることがわかった。一方、このアミノ酸の働きを抑えると、グルタミン酸による神経の破壊も抑えられた。
D-セリンとの因果関係がはっきりしたようです。徐々に筋力が低下していく難病、そして命に関わる病気であるがゆえに、治療法の確立として期待が高まります。
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