心臓が正常に動くために必要で、不足すると心不全につながるたんぱく質を国立循環器病センターと大阪大などの研究グループが発見した。心臓への負担が少ない心不全治療薬の開発につながる可能性がある。米医学誌ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション電子版に21日、発表した。
発見されたたんぱく質はミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)と呼ばれる酵素の心臓特異型。12人の重症心不全患者から治療のために切り取った心筋を使い、そこで働く遺伝子を調べた。すると、心不全の症状の重さと関連の深い遺伝子が特定され、その遺伝子が作りだすMLCKが少ないと、心不全になる傾向が強いことがわかった。
心筋内のMLCKが足りない熱帯魚を遺伝子操作でつくったところ、心臓収縮の原動力となる筋細胞内の配列が乱れ、心臓が大きくなって拍動に異常が現れ、心不全と同じ症状になった。ラットの実験でも、MLCKが心筋細胞内の規則的な配列を維持し、心臓が正常に収縮するために必要なことがわかったという。
循環器病センターの北風政史・心臓血管内科部長は「弱った心筋を酷使する従来の強心剤は心臓への負担が大きい。心臓のMLCKの働きを活性化することで壊れた心筋を修復し、副作用も少ない心不全治療薬の開発につながる」と話す。
筋肉の収縮には、ミオシンとアクチンという2つの構造物が関与しています。MLCKは、ミオシンをリン酸化させて筋肉を収縮させる働きがあるとされています。
MLCKが不足すると筋肉がうまく収縮できなくなるため、心臓の拍動が一律でなくなるのでしょうね。遺伝子レベルの細かい違いが、最終的に命を奪うリスクに。
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