高齢者に対する虐待が2006年度、家庭内で1万2575件、施設内で53件の計1万2628件あったことが21日、厚生労働省が高齢者虐待防止法施行後、初めて行った全国調査で分かった。
家庭内における虐待者は息子と夫で半数を占めた。市町村の9割以上に対応窓口が設置されたが、早期発見・見守りの体制づくりに取り組む市町村は4割弱にとどまるなど、自治体の課題も浮き彫りになった。
市町村が06年度に受け付けた家庭内の虐待に関する相談や通報は1万8393件。通報者の41%がケアマネジャーなど介護関係者だったが、虐待を受けた高齢者本人からの通報も12%あった。このうち、市町村が虐待と判断した事例は1万2575件に上った。
虐待者は息子(37%)が最も多く、次いで夫(14%)、娘(14%)の順。国民生活基礎調査(2004年)によると、家庭内の主な介護の担い手は75%が女性であるにもかかわらず、男性による虐待の割合が高い実態が明らかになった。
虐待の種類で最も多いのは、暴行を加えるなどの「身体的虐待」(64%)。暴言を吐くなどの「心理的虐待」(36%)、「介護放棄(ネグレクト)」(29%)、財産を奪うなどの「経済的虐待」(27%)が続いた。
一方、虐待を受けた高齢者は女性が77%を占めており、84%が同居している人から虐待を受けていた。
特別養護老人ホームなど施設内の虐待件数は53件。約8割が介護職員による虐待だが、「施設長」や「開設者」などによる虐待も約1割あった。
虐待の通報を受けた市町村の対応では、介護施設に入所させるなどして、虐待を受けた高齢者を虐待者から分離した例が36%あった。また、91%の市町村が対応窓口を設置していたが、「警察との連携のための協議」(32%)、「早期発見・見守りネットワークの構築」(38%)など、関係者との連携が遅れている実態も明らかになった。
自分で何でもできるときは、肉親よりも赤の他人の攻撃を恐怖するものですが、自分でするのに支障が出てきたときや何も出来ないとき、最も怖いのは、肉親かもしれません。
現実問題、近親間での虐待数は相当数に上ると見られています。
参考:高齢者虐待防止法
2006年4月に施行。「身体的虐待」「介護・世話の放棄・放任」「心理的虐待」「性的虐待」「経済的虐待」の5行為を虐待と定義した。虐待を受けたと思われる高齢者に重大な危険が生じている場合、発見者に市町村への通報を義務づけたほか、市町村に家庭への立ち入り調査権限を与えている。
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