陣痛や腹痛を覚えて初めて救急車を呼んで医療機関に駆け込み、いわゆる「飛び込み」で出産する事例が増えている。
その多くが、妊婦健診を一度も受けたことのない「未受診妊婦」という。各地で救急搬送中の未受診妊婦が受け入れを拒否されるケースが相次いでおり、専門家は「赤ちゃんと自分の健康のためにも、妊婦健診を受けて」と呼びかけている。
「今年になってすさまじい増え方です」。横浜市大付属病院産婦人科教授の平原史樹医師は、「飛び込み出産」がこのところ急増していると指摘する。
神奈川県産科婦人科医会がこのほどまとめた調査によると、同県内8か所の基幹病院で扱った飛び込み出産は、2003年に20件だったのが04年28件、05年39件、06年44件と年々増加。今年は4月までで既に30件を超えており、年末には100件を超えると推計している。平原医師によると、飛び込み出産のほとんどが未受診妊婦だという。「産科病院や分娩施設が減り、医師不足のため健診を受ける機会も減っているため」と分析する。
未受診妊婦は救急搬送されても妊婦・胎児の健康状態が把握しにくいため、受け入れを拒否されることが多い。8月末に奈良県で妊娠中の女性が病院に受け入れを断られ死産した事例では、かかりつけ医がいなかったことがわかっている。その後、北海道、宮城、千葉などでもかかりつけ医のいない妊婦の受け入れ拒否のケースが明らかになっている。
9月7日、日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の幹部が厚生労働省を訪れ、産科救急医療体制の整備や産婦人科医師不足への対策を舛添要一厚生労働大臣に陳情した。陳情書では未受診妊婦についても言及し、救急医療での対応を検討する必要がある、と指摘している。
同学会の産婦人科医療提供体制検討委員会の委員長で北里大医学部教授の海野信也医師は「未受診妊婦の『飛び込み出産』は全国的に増えている。産科医療の現場では非常に困惑している」と指摘する。
日本助産師会専務理事の加藤尚美さんによると、飛び込み出産につながる未受診妊婦は以前は出産を経験したことのある女性に多かったが、最近は〈1〉若年妊婦〈2〉外国人女性〈3〉経済困窮家庭――などに多い傾向があるという。「自分自身の健康へ関心が低いのも特徴」と指摘する。
加藤さんは「健診を受けないことはお母さんの健康を損い、赤ちゃんの命にかかわる恐れがある。健診は必ず受けてほしい」と話す。そして「未受診妊婦を減らすためには、無料健診をさらに拡充するほか、若いころからの健康教育を充実させる必要があるでしょう」と話している。
自分の健康に関心がなくなっているのは分かりますが、それはあくまで「自己責任」ですよね。赤ん坊を宿した時点で、「1人の身体ではない」わけです。赤ん坊のことを考えているのなら、経済的理由とか、健康に関心がないとか、いえないと思います。
若い人が多いのも特徴のひとつらしいですが、要するに社会が若者に対して教育できてないということでしょうかね。医療機関を受診しないで飛び込み出産という、産婦人科医への丸投げが、日本の産科医療を縮小させることに繋がります。未受診の人には、「頭を使って」考えてもらいたいものです。
妊婦健診
流産や早産などを予防するため、妊娠週数に応じて問診や内診、胎児の超音波検査などを行う。出産までに13〜15回受け、費用は自己負担で1回約5000円、血液検査や超音波検査を行うと1万〜1万5000円かかる場合もある。国は原則2回分の健診費用を負担しているが、独自に負担軽減に取り組む自治体もある。