ヒト胚性幹細胞(ES細胞)を人工培養し、損傷した心臓組織に移植する方法が、まもなく実用化する見通しだという。心臓移植の専門家が3日、英国王立協会(Royal Society)発行の生物学専門誌「Philosophical Transaction B」特別号の中で発表した。
この方法は、患者自身の骨髄から採取したES細胞を人工的に育てて、心臓筋あるいは心臓弁に移植するというもの。3年から5年後には実用化される見通し。
血液の環流を調整する4つの心臓弁とそれを取り囲む筋肉からなる心臓の組織は、いったん損傷を受けると再生が不可能だ。そのため心臓発作を起こすと、致命的でない場合でも、身体を衰弱させることになる。また加齢とともに、心臓の組織は弱体化していく。
「患者自身の繊維組織から培養した心臓弁を最も必要としているのは、先天的な心臓欠陥をもって生まれてくる新生児。100人に1人がこの問題を抱えている」と指摘するのは、心臓移植研究の第一人者で今回の研究の中心的人物でもある、Simon Hoeurstrup氏。
現在使用されている人工の心臓弁は、成長にともない定期交換する必要があるため、子どもの患者に多大な苦痛を与えることになるうえ、死亡率も成人の場合より高い。さらに、耐久性の高いメカニックな心臓は心臓裏側の細菌感染の危険性を高め、血液の流れを不正常にする可能性が高い。血液の凝固を阻止する薬を服用せざるをえないため、内出血と塞栓症の危険を高めてしまう。
こうした理由から、免疫システムによる拒絶反応を起こさない患者自身の組織を移植する方法は、関係者から移植治療における「聖なる杯」とされていた。
オオッ、いよいよ!!!
この分野に関しては日本の東京女子医大も負けない研究をしていると思います(というか世界一?)。
心臓の弁に由来する疾患は結構多い上に、先天性のもの、若年者でも機能がおかしくなるもの、中高齢者で発症するものとさまざまです。それだけ多くの患者に需要があります。更に今では生体弁、機械弁ともにデメリットがあり、長期的に使うのが難しいとされています。しかし自分の細胞で作った心臓弁でしたら、免疫的な拒否反応も生じることはありません。著しくQOLを高めるであろうこの技術があと3年で現実のものとなります。