骨を作る細胞に作用していると考えられていた女性ホルモンが、骨を分解する「破骨細胞」の寿命を調節して骨量を維持していることを、東京大などの研究グループが突き止めた。これにより、女性ホルモンの欠乏によって閉経後に骨粗しょう症を発症するメカニズムの一端が明らかになった。新しい治療薬開発にもつながる可能性があり、7日付の米科学雑誌「セル」(電子版)に掲載される。
健康な人では、骨をつくる骨芽細胞と、骨を分解・吸収する破骨細胞との働きが釣り合い、一定の骨量が保たれる。閉経などにより女性ホルモンが欠乏するとこのバランスが崩れ、骨がすかすかになる骨粗しょう症を引き起こす。しかし、そのメカニズムは分かっていなかった。
通常のマウスの破骨細胞に女性ホルモンを投与すると、「アポトーシス」と呼ばれる細胞死を引き起こす遺伝子の働きが活発になり、破骨細胞の細胞死が進んだ。しかし、女性ホルモン受容体を持たないマウスの破骨細胞では、遺伝子の働きに変化はなく、細胞死も進まなかった。
グループの同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明教授は「女性ホルモンは骨を吸収する細胞が長く居座らないようにする働きをしていた。破骨細胞の女性ホルモン受容体を活性化させる物質が見つかれば、新たな治療薬につながるかもしれない」と話している
女性ホルモンと骨粗鬆症の関連性は以前から指摘されていましたが、そのメカニズムの一端を初めて解明したというわけです。
理論的には、破骨細胞に存在する受容体のみに女性ホルモン様物質が作用すれば、骨粗鬆症の新しい治療薬になるんでしょうけれど…ホルモン関係は難しいですからね。副作用の問題もありますし。それでも、骨粗鬆症のような女性全体の病を治すためにも、研究者の方々に頑張ってもらいたいと思います。
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