熊本市の慈恵病院が運用する「赤ちゃんポスト(こうのとりのゆりかご)」で今月、預けられた赤ちゃんを“両親”が引き取っていたことが分かり「緊急避難としての施設の役割が発揮された」と評価の声が上がっている。今年5月の開設から既に6人が預けられ「捨て子を助長する」との懸念が高まりそうな気配だったが、今回の事例で施設の意義が改めて見直されそうだ。ただ、国などは評価に慎重な姿勢を示している。
関係者によると、今月8日、施設に生後約1カ月の男児が預けられたが、17日に両親とみられる男女が引き取った。男女はさまざまな事情からいったんは「預けた方が子供のため」と考えたが、やはり親子の情は厚く「手放せない」と、考え直したらしい。
病院と男女をつないだのは手紙とメールだった。病院はゆりかごに「引き取ることができるようになったら連絡してほしい」とのメッセージを記した手紙をポスト内に置いている。男女はその手紙を持ち帰った上で、病院のホームページなどを通じ、メールで連絡を取ってきたらしい。このメールのやり取りの間に、男女の思いが次第に変わったようだ。
赤ちゃんポストを研究しているノートルダム清心女子大の阪本恭子講師は「今回のケースはポスト利用の理想的な形。ドイツの施設でも3割の親が名乗り出ている」と話す。妊娠した未婚女性の支援などに取り組む円ブリオ基金センターも「子供の命が守られ、親子関係も戻り、良かった」と評価した。
一方、元大阪市中央児童相談所長の津崎哲郎花園大教授は「両親が一時的に養育が難しい事情があって預けたとすれば、(赤ちゃんポストに預けるのでなく)乳児院に一時的に預ける制度もある。親元に戻った後も家族が問題を抱えているなら、病院と行政が連携して家族をフォローする必要がある」と提言した。
厚生労働省家庭福祉課の担当者は「子供は親が養育するのが一番望ましい」「子供を(ポストに)預けるということはあってはならず、行政などに相談してほしい」と従来の考えを繰り返し、運用状況の検証などにも消極的だ。
いくら夫婦といえども、出産における過程、そして将来を考えて、不安におもい、つい手放してしまうことはあると思います。そういう人たちの救済策、そして回復策として、こうのとりのゆりかごは存在しているのです。
乳児院に一時的に預ける制度もある、としていますが、それとこうのとりのゆりかごは全く別モノです。匿名だからこそ意味がある制度なのです。どういう境遇にいるのか、どれだけ苦しんでいるのかを想像できずに批判することは容易いですが、子供のためを思うならば、こうのとりのゆりかごの存在を認めることこそ、より現実的な解決策だと思います。
あとはマスコミがもう少し自重してくれれば。ひっそりと運営するのが望ましいスタイルですからねぇ。
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