先天障害の発症リスクを低下させる効果があるとされる、ビタミンB類の一つ「葉酸」について、妊娠前から積極的に摂取していた妊婦はわずか1割台にとどまることが、横浜市立大などの調査で分かった。厚生労働省は2000年、妊娠を計画している女性に対し、1日当たり0・4ミリ・グラム以上の摂取を推奨したが、同省の呼びかけが浸透していない実態が浮き彫りになった。
同大市民総合医療センターの高橋恒男教授(産科)らは、05年9月〜06年1月、妊婦健診で同センターを訪れた妊娠24〜26週の女性198人を対象にアンケート。148人(平均年齢31・4歳)が回答した。
その結果、以前から葉酸について「よく知っていた」と回答したのは11・5%、「少しは知っていた」が61・5%で、合わせて73%の妊婦が葉酸を知っていた。また、同省の呼びかけは、「よく知っていた」「少しは知っていた」を合わせると、半数の48%が知っていた。
しかし、葉酸が母体内で効果を発揮する妊娠1か月前から妊娠に気づくまでの食生活について尋ねたところ、「葉酸を意識してとっていた」と答えた妊婦は16・9%だけ。サプリメント(栄養補助剤)などを用いて、積極的に葉酸を摂取していたのは全体の13・5%に過ぎず、葉酸の知識が実際の行動につながっていないことが明らかになった。
高橋教授は「葉酸を積極的にとる女性が増えないのは、日本はサプリメントを利用する習慣が一般的ではないためではないか。米国ではシリアルなど穀物の加工品に葉酸の添加を義務づけており、日本でも米国のような政策をとるのが望ましい」と話している。
あまりよく知られていませんが、葉酸が不足すると、脊髄が脊椎におさまらず外に出てしまう「二分脊椎症」を起こすとされています。背中から瘤のように飛び出す場合もあり、生まれた後で手術しなければいけません。大事な神経が通っているところなので、神経障害が残ることもあります。妊娠する可能性がある人は、葉酸を摂取しましょう。
葉酸はレバー、緑黄色野菜、果物に含まれています。忙しい人はどうしても不足しがちですね。
葉酸:ホウレンソウなど緑黄色野菜や果物などに多く含まれ、脊髄が左右に分裂した二分脊椎などの神経管閉鎖障害の発症リスクを減らす効果が報告されている。このため、米疾病対策センター(CDC)が1992年に、妊娠可能な女性すべてに対し、1日当たり0・4ミリ・グラムの葉酸摂取を勧告するなど、欧米諸国では90年代から対策が進んでいる。
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