頭髪にシラミがわき、頭皮のかゆみを伴うアタマジラミ症。毎年子どもたちの間で流行するが、兵庫県内では今夏も小学校で報告が増え始めており、感染拡大を心配してプール授業を一時延期する小学校もあった。予防やケアはどうすればいいのか。シラミ症に詳しい、西宮市の兵庫医科大学皮膚科の夏秋優准教授に聞いた。
シラミは吸血性の昆虫。人に寄生するシラミにはアタマジラミのほか、衣類に付くコロモジラミ、陰毛に生息するケジラミがあり、頭皮などから吸血する際に注入するだ液腺物質によってアレルギー反応のかゆみが起こる。この病害をシラミ症という。第二次世界大戦後に強力な殺虫剤、DDTの散布でほぼ全滅したものの、抵抗性のものが生き続けているという。
そのうちアタマジラミ症は主に子どもを中心に流行。県皮膚科医会が一九八七年から実施する調査では、発症は十歳未満が83・5%を占め、男児より髪が長い女児が圧倒的に多い。そして母親世代の三十歳代にも小さなピークがある。
なぜ子どもに多いのか。夏秋准教授は「成虫は頭髪の間を素早く動き回り、人と人の髪が直接触れ合った際に移動する」とし、「子どもは頭を寄せ合って遊ぶことが多く、母親も子どもと同じ枕で寝ることなどで感染するのだろう」と話す。
また、学校などではプール授業での感染が問題視されるが、夏秋准教授は「成虫は頭髪から離れると長く生きてはいられない。床をはったり水中を泳いだりはせず、プールでの感染は帽子の貸し借りや着替えなどの際の接触による」と説明。「シラミはチェックが厳しくなる夏に報告が上がりやすいだけで年中いる」とも話す。
流行時の学校などの対応については「保護者に対し、保健だよりなどで流行を知らせ、正しい情報の提供を」と呼び掛ける。「感染は誰にでも起こり、毎日洗髪するかなど清潔さとは関係ない。いじめられることを心配して感染を隠す親もおり、不安を取り除くことが大切」と指摘する。
家庭ではどうすればいいか。夏秋准教授は「治療には毛をそると効果的だが日常生活を考えれば難しい。シラミは普通の洗髪では死なず、殺虫剤のフェノトリンなら死滅する」と話す。フェノトリンは粉剤とシャンプーが薬局などにあり、副作用もまずないという。
シラミの卵は約七日でふ化、吸血しながら十―十四日で成虫になり、その後二十―三十日生きる。雌は一日一―四個の卵を、主に後頭部や側頭部の髪の付け根付近に、一本に一個ずつ産む。「この生態から、薬剤は三―四日に一回の使用を三、四回繰り返せば全滅させられる」と夏秋准教授。卵には薬剤が効かないので、目が細かい「すきぐし」や手でこまめに除去することが有効という。
感染の予防は「成虫が頭髪を一時的に離れ、衣類を介して移動することもあるので、寝具や帽子の共用などは避けて。洗濯では感染しない」とアドバイスする。
「家庭では早期発見と処置を心がけ、正しい診断のために早めに皮膚科への受診を」と話している。
シラミに関して言えば、インキンやSTDと同様に偏見に満ちた病気だと思います。戦後のシラミ大流行のイメージが未だに根づいているため、「頭を不潔にしていると感染する病気」という印象は誰もが持っていると思います。
しかし、シラミは清潔にしていてもなる病気です。ここがとても肝腎。特に10歳未満の子供がかかりやすいことを考慮すれば、我々大人が配慮しなければいけない部分であると分かりますよね。大人たちの知識と理解が足りないせいで、子供を傷つけてはいけません。安心させた上で、皮膚科で適切な治療を受けてください。
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