2007年08月06日

ウイルスの殻を使って、特定の臓器にのみ薬を届る方法を開発

ウイルスの殻で包装、標的臓器に薬「宅配」 阪大開発

 病気が起きた臓器にだけ薬を届けます――。そんな「薬の宅配便」技術を、大阪大の金田安史教授(遺伝子治療学)らが開発した。薬効成分を包むのに、標的細胞を探す「アンテナ」を付けたウイルスの殻を使う。病気の場所にだけ薬を「宅配」できれば、それ以外の正常組織への副作用を防げるうえ、薬の量も減らせると期待される。

 使ったのは、東北大グループが1950年代に見つけたセンダイウイルス。ネズミなどに肺炎を引き起こすほか、人の赤血球に害を及ぼすこともある。殻に「触手」のような特殊なたんぱく質があり、ほかの細胞と「融合」する特質をもつ。

 金田さんらは、この殻の特徴を残したままウイルスの毒性をなくし、殻の中に薬を入れて薬の「運び屋」にした。患部の細胞と融合すると、内部の薬が放出される仕組みだ。

 ただ、そのままでは患部だけでなくいろいろな細胞と融合してしまう。そこで、最新の遺伝子工学でウイルスの「触手」を改変、標的とする細胞の遺伝子を一部取り込むなどして、標的細胞とだけ融合し、それ以外の正常な細胞とは融合しないようにした。

 表皮水疱症という、皮膚の異常が起きるマウスを作って、改良した殻の能力を試したところ、何層もある皮膚のうち、狙った層にだけ融合することが確認された。

 狙った臓器や組織に薬を届ける仕組みは、ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)と呼ばれる。従来は高分子物質を使う方式が多かったが、今回の手法はウイルスの殻を使う点が独特で国際特許を出願中だ。



 ウイルスと人類は切っても切り離せない関係にあります。しかし害のあるものばかりですが、遺伝子レベルでの改良が可能になってからというもの、ウイルスを使って良い薬を作ろうとする試みが始まりました。

 今回のように、特定臓器にピンポイントでぶつけることができれば、全身に副作用を及ぼす抗がん剤などがより使いやすくなると思います。効果が薄れることなく特定臓器に届くという点も大きなメリットです。

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posted by さじ at 16:56 | Comment(0) | TrackBack(0) | 薬理
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