乳児への感染に注意が向けられてきた百日ぜきが、大人の間で年々広がっている可能性が高いことが31日、国立感染症研究所感染症情報センターのまとめで分かった。同センターは「子供への感染源になり得るため、発生動向に注意する必要がある」と警戒しているが、大人の間での流行を把握するのは難しいのが現状だ。
同センターによると今年、全国約3000カ所の小児科定点医療機関から、7月22日(第29週)までに報告された百日ぜき患者数は1197人。同時期までの報告としては、流行がやや大きかった平成16年の1091人を超え、流行が大きかった12年の2289人に次ぐ多さだった。
患者の年齢別割合を調べたところ、6歳未満の乳幼児が年々減少する一方、小児科定点からの報告ではあるものの20歳以上の割合が高まっていることが分かった。12年は2.2%に過ぎなかった20歳以上が、16年に9.5%にまで増え、18年には24.3%、今年(第29週まで)は30.7%にのぼっていた。6歳未満は15年までは8割以上を占めていたが、今年(同)は46.2%で半数を割っている。
百日ぜき患者の報告は小児科からの報告に限られるため、大人の患者の報告は本来まれなケース。子供と一緒に小児科を訪れた保護者が百日ぜきと診断された場合や、長引く患者のせきの症状に診断を迷った内科医が小児科医を紹介して診断される場合などに限られるとみられる。
感染症情報センターの安井良則主任研究官は「患者報告が小児科定点医療機関からに限られいることを考慮すると、現れた数字は氷山の一角ではないか。大人の間で感染がどこまで広がっているか実態を把握するのは難しいが、子供の百日ぜきの感染源になり得ることから注意が必要だ」と話している。
大人の百日ぜきをめぐっては、今年5月に香川大学で医学部を中心に集団発生が確認され、全学休講の措置がとられたほか、今月には高知大学医学部でも集団発生が確認され、休講措置が取られた。
あまり話題に上らない百日咳ですが、先日起こった香川大学医学部の集団感染でトピックとなりました。
医学処 香川大学医学部で百日咳の大流行。職員にまで広がり休講に。
何で流行しているのかは不明ですが、免疫能が弱っているとか、もしかすると、特定の時期だけ予防接種の効力そのものが弱かったのかもしれません。
■百日ぜき
百日ぜき菌の感染を原因とする急性の呼吸器感染症。けいれん性のせき発作が特徴。乳幼児、特に6カ月以下の乳児が発症すると死に至る危険性があるが、大人は症状がまちまちで、長引くかぜの症状と誤解されやすい。昭和25年に百日ぜきワクチンの接種が始まるまで、国内で毎年約10万人の患者が発生し、うち約10%が死亡していた。乳幼児へのワクチンの定期接種があるが、いまでも小児科定点から年間1500人前後の発症が報告されている。