全国に75か所ある刑務所・拘置所のうち、20か所の常勤医が4月1日現在で定員割れとなり、1人もいない刑務所も8か所に上ることが法務省矯正局のまとめでわかった。
2004年4月に新たな臨床研修制度が導入されてから、医局勤務医が少なくなった大学が医師派遣を取りやめるなど、一般病院と共通する問題も背景にあるとみられている。
刑務所・拘置所75か所の常勤医の総定員は226人だが、欠員は28人と1割以上も不足している計算になる。法務省組織規程で各刑務所・拘置所に医師である医務課長1人を常駐させるよう定めているほか、各施設は収容人数などを基に定員を決めている。しかし、定員3の千葉(千葉市若葉区)、定員2の長野(長野県須坂市)両刑務所などでは、常勤医が1人もいない。
常勤医が定員に満たない刑務所では、119番通報して受刑者を周辺の病院に救急搬送する事態が増加。緊急を要さない場合も、刑務官ら職員を緊急招集して外部の病院に付き添わせたりするケースも多い。
千葉刑務所では、常勤医がいなくなった4月に病院へ付き添った職員が延べ177人に上った。大当紀彦・総務部長は「常勤医がいれば、夜間でも対処の仕方を指示してもらえるのだが……。職員の負担も大きい」と話す。千葉刑務所では今年5月になって、常勤医1人を確保した。
名古屋矯正管区によると、今年4月から常勤医ゼロとなった富山刑務所でも、6月末までの3か月間に受刑者が病院に治療に行った事例が63件と、昨年同期からほぼ倍増した。30年以上前から富山大などの医師派遣を受けていたが、大学側に「勤務医が不足する中で一般病院への派遣も大変で、余裕がない」として打ち切られたという。
受刑者約500人を収容しながら、3年以上も常勤医ゼロが続く帯広刑務所でも、札幌医大が医師派遣を打ち切ったことがきっかけ。武田薫・総務部長は「知り合いの医師らを通じて、手探りで募集をしているが全く応募がない」と頭を抱えている。
名古屋矯正管区によると、常勤医は兼業が禁止される国家公務員であることに加え、暴力団関係者らから暴言を吐かれるケースもあり、敬遠される傾向が強いという。
法務省矯正局では04年度、全刑務所に近隣の医療機関や自治体などと「行刑施設の医療に関する協議会」を設置。医師を募集するほか、非常勤医師の派遣や急患の受け入れを要請しているという。しかし、矯正局では「特に地方の医師不足は厳しい状況で、事態はなかなか改善されない」と話している。
難解ですね。給料がいいというわけでもないし、いる患者は犯罪者なわけですし。正直やりたくないというのが本音でしょう。しかし誰かがやらなければいけない、でも今は空前の医師不足…。
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