手足が不自由になるなどの症状が現れる神経難病「多発性硬化症」に対し、進行を抑える治療薬として唯一認可されているインターフェロンベータの注射後、急激に悪化した例が相次いでいることがわかり、厚生労働省研究班(主任研究者=吉良潤一・九州大神経内科教授)は緊急の全国実態調査に乗り出した。
多発性硬化症は、中枢神経が侵される原因不明の難病で、手足のまひなど運動、認知障害が起きる。国内の患者数は約1万人と推定され、治療薬インターフェロンベータは、2000年に発売され、現在2種類ある。
日本人患者の約4分の1には、失明などに至る「視神経脊髄型」と呼ばれる障害が現れる。このタイプでは、薬が効かなかったり、悪化したりしたとの報告が数年前からあった。
このため、厚労省研究班の医師が東大など9病院の患者を調べたところ、治療開始後、手足のまひや視力障害が起き、歩けなくなるなど急激に悪化した患者が7人いることがわかった。うち4人は後遺症で車いす生活になった。
薬と症状悪化との因果関係は不明だが、多くは視神経脊髄型の患者で、薬剤メーカー2社は6月下旬、こうした患者への慎重投与を呼びかける医療機関向けの通知を出した。
同研究班は、全国の約2000人の患者を対象に薬の使用状況、再発の頻度や悪化の程度などを調べ、今年度内に結果をまとめる。
吉良教授は「視神経脊髄型でも半数以上の患者ではインターフェロンベータ治療が有効とされており、どんな場合に無効例や悪化例があるか詳しく調べたい」と話している。
視神経脊髄型の全てが悪化するというわけではないらしいので、兼ね合い次第ですかね。インターフェロンによって良くなる患者さんも確実にいるわけですから。医師と患者の信頼関係が大事だと思います。
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