胃かいようや慢性胃炎の原因となる細菌の一種「ヘリコバクター・ピロリ」(ピロリ菌)の祖先が、深海底に広く分布する微生物であることを、海洋研究開発機構の研究グループがゲノム解析によって突き止めた。これらの細菌が人の体に住み着くようになった進化の過程解明につながるという。3日付の米科学アカデミー紀要(電子版)に掲載された。
研究グループは沖縄本島の北西約200キロ、水深約1000メートルの海底から熱水が噴出する場所で、「イプシロンプロテオバクテリア」と呼ばれる微生物2種を採取。ヒトの1000分の1以下の小さなゲノムに、それぞれ2466個、1857個の遺伝子が見つかった。解析の結果、ピロリ菌には残がいしかない、二酸化炭素から有機物を作り出す遺伝子を、微生物は完全な形で持っていた。
この微生物は世界各地の熱水噴出域で見つかっている。光合成ができない暗黒で高圧の厳しい環境下でも、熱水中の水素や硫化水素をエネルギー源とし、二酸化炭素から有機物を合成する。
グループの中川聡研究員は「環境変化が激しい胃の中にすむピロリ菌とこの微生物は、厳しい環境下で生きる戦略が似ている」と話している。
深海という過酷なシチュエーションで生きてきた微生物が、その生活の場を強酸の海である人の胃の中にうつす、か。なかなかにロマンを感じなくもないですが、人とは共存できていないので、問答無用で除菌する方向でお願いしたい。
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