2007年06月29日

帝王切開が遅れたため後遺症が生じたとして1億を超える賠償請求。

「帝王切開遅れ後遺症」

 東京都町田市民病院で2003年、帝王切開が遅れたため重い後遺症が残ったとして、横浜市内の男児(4)と両親が、町田市と担当医師に介護費用や慰謝料など約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が26日、横浜地裁であった。

 三代川俊一郎裁判長は「早く帝王切開していれば後遺症は回避できた」として、町田市と医師に約1億3840万円の支払いを命じた

 判決によると、男児の母親(39)は03年6月7日、破水のため入院。胎児の心拍数に異常があったことから、病院は同日、吸引器具で胎児を引き出そうとしたが失敗した。その後、帝王切開が行われたが、男児は仮死状態で生まれて低酸素脳症となり、肢体がマヒする重度の障害が残った。

 三代川裁判長は「吸引分娩を選んだ結果、出産が遅れた。適切な分娩方法を選択すべき注意義務に違反した過失がある」と指摘した。



 これは運というか、確率の問題なのでは?医師側の「過失」なんでしょうか。吸引分娩を選んで成功しなかったから賠償とは。逆に帝王切開を行って手術の合併症で後遺症が残ったら「帝王切開を安易に選択したことが後遺症につながった」とも言えるわけですよね。産婦人科医にとっては八方塞りの状況なのではないでしょうか。

 産婦人科って、一般の方にとってはかなり漠然としたイメージだと思います。「子どもを生む」という、一人の女性が一生のうちに数度しか経験しないことを扱っているわけですから。しかし、誰しもが通る医療でもあるわけです。現在の産婦人科医療の直面している問題は、他人事では済まされないほど切迫しています。

 「ノーフォールト 岡井崇」という小説をご存知でしょうか。昭和大学病院産婦人科科長の岡井崇さんが書いた産婦人科医療と裁判に関する小説です。

 現役産婦人科医が描くその医療現場はとてもリアルで、フィクションとはいえ圧倒的な迫力を感じます。内容は産婦人科医の、裁判にいたるまでの経緯、その心情、患者やその家族とのコミュニケート、弁護士や裁判官との観点の違いなど、取材したのでは到底書けないような深い内容を見事に纏め上げています。産婦人科医療の現状、そしてその解決にはどうすれば良いのか、一般の方にも分かるよう綿密な医療行為には補足がなされているのもポイント高いです。是非一度ご覧になってみて下さい。一度読み出したら止まらない面白さがあります。

関連:ノーフォールト 岡井崇

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posted by さじ at 01:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生殖
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