医学部の定員という蛇口を閉めたままで、あれこれやりくりしても、焼け石に水ではないか。 与党が参院選向けに打ち出した医師確保策を見て、そう思わざるをえない。
医師は毎年4000人程度増えており、必要な数はまかなえる。問題は小児科や産婦人科などの医師不足のほか、地域による医師の偏在だ。こうした偏りを正せばいい。これが厚生労働省の方針だ。
その方針をもとに、与党は選挙公約でこれまでの偏在対策に加えて、新たに次のような項目を追加した。
政府が医師をプールする仕組みをつくり、医師不足の地域へ緊急派遣する。大学を卒業した医師が研修で都市の人気病院に集中しないように定員を改め、地方の病院にも回るようにする。
確かに、偏在の是正にはすぐに手をつけなければいけない。
しかし、医師不足は全国の病院に広がっている。都市でもお産のため入院できない地区が増えている。深刻な実態が進んでいるのに、偏在対策だけでは安心できると言えないだろう。
いま求められているのは、時間はかかるが、医学部の定員を増やし、抜本的に医師不足の解消を図ることだ。
政府は1982年と97年の2回、医学部の定員を減らす方針を閣議決定した。これに基づき、ピーク時には約8300人だった定員が約8%削られた。特に国立大学が大きく減らされた。
医師が多くなれば、診療の機会が増え、医療費がふくらむ。だから、医療費の伸びを抑えるには、医師を増やさない方がいい。そんな考えからだ。
いまの危機的な医師不足はその結果といってよい。
経済協力開発機構(OECD)の調べでは、人口1000人当たりの医師数が日本は2人で、先進国の平均の2.9人を大きく下回る。しかも、このままでは韓国やメキシコ、トルコにも追い抜かれる可能性があるという。
政府・与党はこうした状況を招いた責任をどう考えているのか。
もうひとつ考えなければならないのは、最近の医療はかつてよりも医師の数を必要としていることだ。技術の高度化に伴って、チーム医療が大勢となった。患者に丁寧に説明することが求められ、患者1人当たりの診療時間が増えている。医師の3割は女性が占め、子育てで休業することも多い。
おまけに高齢化はますます進み、医師にかかるお年寄りは増える。
医師の偏在さえ正せばいい、という厚労省の楽観的な見通しは、医療の新しい傾向を踏まえたものとは思えない。
医療のムダは今後ともなくしていかねばならない。しかし、医療費の抑制のため発想された古い閣議決定にいつまでもこだわるべきではない。そんなことをしていたら、日本の医療は取り返しのつかないことになる。
20年前、10年前、5年前とも違う「今の医療体制」を考えてみると、今は明らかに医師不足です。地方の医師が不足しているとありますが、別に地方に限ったことではなく、大都市の大病院でも医師は不足しています。ですから記事中にもありますように、医師数を増やすのがてっとりばやい。
しかし国立大学医学部だけでなく私立大学医学部でも、医学生1人あたりン千万円の補助が国から出ます(私立大学はそのうちのン千万を家庭が出しているに過ぎません)。ついに1000兆円にまで膨らんだ国の借金を眺めると、医師を増やすことが国の財政を圧迫することは目に見えています。まぁ、政治家と役人が自分の利益をとらず国のことを考えれば余裕で国民医療費なんぞ増やすことはできるんでしょうけれど。
昔は医師が儲けていたりだとかいう時代もありましたけど、今は一部の開業医以外そこまでバカ稼ぎできないのが現状です。サラリーマンの数倍働いて、サラリーマン+αぐらいの給料しか出ていないと思います。しかし医者は不当に儲けているだの、いらない薬をおしつけて利益を稼いでるだの、まったく見当ハズレな偏見をもった方々のせいで、今現在医者は奴隷のように働いています。
しかし…思うんですけど、医者になる人ってみんながみんなモチベーションが高いというわけではありませんからねぇ。成績が良いから医学部いくような人たちが医療に熱心になると思いますか?そういうモチベーションの低い医者をみんな地方にやってしまえばどうでしょう。医療における都心のメリットといえば、高度で最先端の医療を行っている点です。給料だけでいったら地方にいったほうが高いわけですし、都心のようにめまぐるしく働く可能性も少ないですし。彼らは目の前の患者を親身に診ればいいわけですよ。別に研究やりたいわけでもないのに都心に残る必要もなかろうに。医学を究めたいと思う人が大病院に残り、それ以外の人は全国に散らばれば、地方の偏在は解消できると思うんですけどね。まあそううまくいかないのが世の中で。プライドがそうさせるのか知りませんが。
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