東京女子医科大学発の医療ベンチャー、セルシード(東京都新宿区)は、皮膚や角膜をはじめとする自己組織再生医療への貢献が期待される温度応答性ポリマーの販売に乗り出す。関連特許の出願が終了したのを機に、大学や企業の研究用として、国内で9月、海外で11月にも提供を開始する計画だ。
温度応答性ポリマーは、東京女子医大の岡野光夫教授が開発した。温度変化に応じて表面が疎水性(親油性)から親水性に変化。親油性にした培養皿(シャーレ)で、患者本人の細胞を増殖させて細胞シートを作成し、その後に親水性に変化させると簡単にはがせる。
従来の細胞培養は、シャーレからはがす場合に分解酵素などを使うため、細胞同士をつなぐ「細胞外マトリックス」も分解されてバラバラになり、生体に引っ付く接着性も失う。シャーレに同ポリマーを張った状態の「アップセル」を使えば、新鮮ですぐに生体に移植できる細胞シートが得られる。
アップセルは、国内で口腔粘膜を培養して角膜に利用する臨床研究が始まっており、その他の部位でも年内には臨床研究が開始される予定。欧州でも年内には治験開始を目指しており、数年から5年後程度で、実際の治療での使用が可能になる見通しだ。
アップセルの価格は、直径3・5センチのシャーレで2000円程度。研究用に提供を開始することで、国内外の研究者や医師が動物実験などに使い、同ポリマーの自己組織再生医療への利用が広がると期待される。同社は将来の株式上場を目指しているが、アップセルの販売で、公開企業の目安である年間売上高1億円乗せを果たしたい考え。
いよいよ実行に。この技術が国内に普及すれば、角膜不足に悩むこともないでしょうし、膀胱組織や心筋組織など、その用途は多岐に渡ります。日本が再生医療の分野で世界をリードする日も遠くありません。そしてそれと同じように、新しい光を受ける患者さんも多くなるに違いありません。
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