東京慈恵会医科大付属青戸病院(東京都葛飾区)で行われた腹腔鏡下手術のミスで男性患者(当時60歳)が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われた元同病院泌尿器科医師、M被告(36)の控訴審判決が5日、東京高裁であった。
長岡哲次裁判長は「被告は手術チームの助手として執刀医を補佐する立場で、その責任は主治医や執刀医と同じとは言えない」と述べ、禁固2年、執行猶予4年(求刑・禁固2年6月)とした1審・東京地裁判決を破棄し、禁固1年6月、執行猶予4年を言い渡した。
控訴審で、弁護側は「被告は患者の死亡を予見することはできず、その義務もなかった」などと無罪を主張したが、判決は「安全に手術を行う知識や、技術、経験がなく、手術を行えば被害者を大量出血させる可能性があることは十分、予想できた」として退けた。
一方で、判決は、〈1〉病院の上司や麻酔医にも責任があった〈2〉手術をした医師の中では最も後輩だった〈3〉手術中の止血処置の失敗などは執刀医の責任が大きい――などとして、刑を軽減した。
判決によると、M被告は2002年11月、主治医や執刀医とともに、助手として男性患者の前立腺がんを摘出する腹腔鏡下手術を実施。誤って静脈を傷つけて大量の出血を招き、男性患者は1か月後に低酸素脳症で死亡した。この事件では、主治医と執刀医を合わせ計3人の医師が起訴され、東京地裁は昨年6月、3人に執行猶予付きの禁固刑を言い渡した。主治医と執刀医は控訴を取り下げ、有罪が確定している。
責任が重いことに変わりはありません。確かに上司に逆らえないとか、一番若いとか、そういうのはあるでしょう。ですがそんなことに拘っていて患者さんを死なせてしまうなどもってのほかです。大いに反省してもらいたい。
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