千葉大学法医学教室(岩瀬博太郎教授)が、変死体の死因判断で検視に立ち会い、検案を行う千葉県内の警察嘱託医を対象に行った調査で、回答者の9割以上が、解剖せずに外見と触診だけで死因を判断していることに「不安を感じている」ことがわかった。7割以上が「改善が必要」と答え、検案制度を含め、死因究明制度の見直しを求める声が根強いことが浮き彫りになった。
調査では、92%に当たる78人が、現状での死因判定方法を「不安」と回答。死因不明の遺体について、「すべて解剖すべきだ」「血液検査や、コンピューター断層撮影法(CT)などの画像診断を行うべきだ」とする声が多かった。
死因がはっきりしない場合、「解剖を勧めたが、警察に却下された」(14人)、「心不全など推測の病名をつけるよう言われた」(5人)という回答もあった。
全国の変死体で解剖されるのは1割程度で、このほかは検視・検案で死因が決定されている。しかし、検視・検案では、頭部や腹部などの内出血の有無、薬毒物による中毒死をすべて見抜くのは困難とされる。検視・検案で病死などとされたものの、後に他殺とわかった例が読売新聞の調べで、全国で過去10年間に少なくとも13件あったことが判明している。
警察嘱託医は業務や資格、報酬を国として規定した法律がなく、解剖の決定権限もない。今回の回答者は6割以上が医師1人の個人開業医で、全体の半数が診療に支障をきたしているなどの理由から、「検案業務は負担」と答えた。
日本法医学会は10年前に死体検案医の認定制度を設けたが、全国約2000人の警察嘱託医らで認定を受けたのはわずか87人(4月現在)。自ら進んで検案に携わりたいという医師が少ないためだ。
面白い学問だと思うんですけど、やはりそのイメージゆえか、後継者不足に悩まされているようです。小児科医のように金銭面で保護することが必要になってくると思いますが。もしくは警察内での立場待遇を良くするか。
犯罪をより深く追求するために、法医学の存在は不可欠です。生きている人を回復させるのが医師の務めですが、死者を相手にしても医師であらねばならない、そう感じます。蔭で大きく社会に貢献している法医学専攻の医師を守るのも、社会の役割だと思います。
関連:医学処 検視しかしておらず、変死体の殺人見過ごしが過去13件発覚