変死体が見つかり、警察が検視でいったん病死などと判断したものの、遺体の火葬後に他殺と判明したケースが、過去10年間に全国で少なくとも13件あったことが読売新聞の調査で分かった。
一方、検視で事件性なしと判断された変死体についても、行政解剖で死因を調べる監察医制度の充実した東京、大阪、神戸では、検視ミスによる殺人の見過ごしが、この10年で計19件あったことも判明。体の表面を主に調べる検視の限界が裏付けられるとともに、監察医制度のない全国の大半の地域では、検視の誤りに気付かないまま数多くの殺人事件が埋もれている可能性が浮かび上がった。
検視は、変死体が見つかった際、事件性の有無を判断するために警察官が行う手続き。外傷や死斑などを調べ、事件性が疑われる場合は司法解剖でさらに詳しく死因を調べる。しかし、事件性なしと判断された場合、監察医制度のある都市部などを除けば、大半が数日で火葬される。
大学の法医学教室などを対象に行った今回の調査によると、13件中6件は、〈1〉浴槽で水死させられた〈2〉強い酒を無理に飲まされた〈3〉血管に空気を注射された――など、遺体の表面を見るだけでは死因の特定が困難なケース。一方で、絞殺が3件、鈍器による撲殺と刺殺が各1件と、外傷などの痕跡が残っていたのに、事故や自殺などとしていたケースもあった。
遺体は、死因や凶器、死亡時刻の特定に役立つ。このため本来は重要な証拠の一つだが、火葬後に捜査を始めたこれらの事件では、写真など極めて限られた証拠から死因を特定するしかなく、警察は供述の裏付けなどに手間取った。
一方、東京23区、大阪市、神戸市(西区と北区を除く)では、検視で事件性がないと判断された変死体でも、監察医の判断で行政解剖を行っており、検視ミスを直後にチェックできる機能が働いている。この行政解剖で殺人事件であることが判明したケースは、過去10年間に、東京で11件、大阪で4件、神戸で4件あった。
死者の身体から色々な情報を得て事件の真相をみる「法医学」は、「きらきらひかる」などのドラマでおなじみだと思います。現実問題として、法医学を専攻する若手医師が少ないことや、そのイメージの悪さから片隅においやられているようなことを想像してしまいがちですが、実際はかなり深く大変面白い学問だと思います。人体に関する事を熟知し、更に物事の理解に長けていないと正直なところ務まらないと思います。頭がいい、というのが私の中の法医学者像ですね。
監察医制度を導入している東京都特別区・大阪市・名古屋市・横浜市・神戸市の5地域では、解剖を多く行っているのに対し、それ以外の地域では遺族の同意をとらねば解剖できないために検視だけで済ませることが多い、これが非常にネックです。検視、つまり見るだけで異常を特定するのはあまりにも難しく、逆にいえばメスを入れれば膨大な情報がそこに潜んでいるといえるのです。
おそらくこれを機に監察医制度が広がるんじゃないかなぁと思います。あまりにも、解剖を行う割合に差が出すぎですからね。