公園の遊具で子供が死傷する事故が相次いでいるが、「失敗学」提唱者の畑村洋太郎・工学院大教授が今月から、遊具の事故例を徹底的に分析し、だれがどう使っても安全な遊具を独自に開発するプロジェクトに乗り出した。
まずは産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の研究者らと協力し、過去の遊具事故を改めて科学的に検証。3年後には究極の安全遊具を設計、試作する計画だ。
楽しい遊具も場合によっては凶器になる。神奈川県相模原市では2000年、揺りかごを揺らす「箱ブランコ」から落ちた小学生の腹部に、戻ってきたブランコが当たって死亡する事故が発生。その後、同様の事故が多発したため、公園から箱ブランコを撤去する自治体が相次いだ。
遊具の故障や老朽化が原因の事故も多い。大阪府高槻市では2004年、回転式遊具のハンドルと支柱を固定するボルトが外れ、穴に指を入れて遊んでいた小学生2人が指を切断した。
畑村教授は「事故が起きると公園の管理者が責任を問われ、遊具が撤去される。このままでは公園から遊具がなくなってしまうかも知れない」と懸念する。
そこで、これまで多くの鉄道事故やロケット打ち上げ失敗などの原因を調査し、再発防止策を検討してきた「失敗学」の経験を生かし、どんな状況でも凶器になり得ない安全な遊具を開発することにした。
例えば高槻市の事故については、「穴が開いていれば子供はつい指を入れたくなるもの。そうした子供の行動パターンをあらかじめ予測して、ボルトが外れても絶対に穴に指が入らない仕組みにするべきだ」(畑村教授)という。
また回転ドアやエレベーターなど、子供の日常生活に潜む危険を紹介する絵本「子どものための危険学」もまとめ、全国の幼稚園に無料配布することを検討している。
誰しも失敗は隠したくなるものですが、畑村教授のすごいところは、その失敗を生かしていこうという「失敗学」を提唱しているところです。何年か前のロケット打ち上げ失敗でマスコミが大バッシングしていましたが、別に失敗することは何もバッシングに値しないわけです。失敗から学べばいい。そして二度と失敗しないように研究すればいいわけです。失敗を隠したり、世間から忘れ去られるよう努力しても何も前には進めません。
医療でも同じことがいえると思います。というか医療そのものが失敗学に基づいているといっても過言ではありません。医療ミスはミスとして反省すべき点ですが、そのミスを隠蔽しようとしたりせず、なぜミスが起こったのか、そして今後どうしていくべきなのかを分析して、全国の指針にすることが必要なのです。ミスを糾弾するなというのではありません、ミスを生かせ、ということなのです。