母乳による育児を進めようと、厚生労働省は、産婦人科医や保健師向けに、母親を指導してもらうためのガイドを初めて作成した。
母乳の与え方に戸惑う母親が多い一方、医師や保健師らの教え方もまちまちなのが現状。同省は市町村を通じてガイドを配布し、医師ら指導する側と母親双方の理解を深めたい考えだ。
「授乳・離乳の支援ガイド」と題したガイドでは、〈1〉出産後なるべく早く授乳し、母乳の出を良くする〈2〉母子を終日、同室にしてスキンシップを図る〈3〉新生児がほしがる時にいつでも飲ませられるようにする――などの要点をまとめた。
母乳は子供の免疫力を高め、乳首を吸うことであごの発達や歯並びの良さにつながるなどの利点があるとされる。肥満予防や、母親の愛情が増して虐待防止につながるとの研究もある。
母乳のみで育てる完全母乳率は1960年に1か月児の7割を超えていたが、粉ミルクの普及で、約20年前からは4割台に低迷。しかし、世界保健機関(WHO)が89年に出した母乳育児を進めるための指針に従って、母親を指導する全国43の病院・医院では、1か月児の完全母乳率は70〜95%の高い率になっている。今回のガイドもこの指針を参考に作った。
医療関係者らで作る「日本母乳の会」の永山美千子運営委員は「母乳で育てられないと悩む母親は多い。原因の大半は医師らの認識不足や支援体制の不備にある。きちんと指導を受ければ、母乳で育てる母親は増えるはずだ」と話す。
母乳育児のメリットは、母乳のもつ免疫力向上成分や栄養面だけではなく、母と子のスキンシップの問題も含まれています。特に母親に対しては愛情を持つ効果などが期待できますが、何より子供にとっては、世界を認識する初めての物体が「母体」であり、母乳を与えてくれる「他者」という事象を理解させるという役割も持っているのです。
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