突然死の原因となる不整脈を起こさないようにしているのは、心臓の筋肉(心筋)を制御する神経の分布の偏りであることを慶応義塾大学の家田真樹・前助手、福田恵一教授(再生医学)らが突き止めた。9日発行の米専門誌ネイチャーメディシン電子版に発表する。
心臓の拍動数は交感神経によって調節されている。交感神経は心臓の「部屋」である心室の内側よりも外側に多く分布するが、この分布の偏りがどんな意味をもつのかはわかっていなかった。
福田さんらは、この偏りが、胎児の段階でセマフォリン3aという遺伝子が働いてできることを見つけた。セマフォリン3aには神経細胞の突起が伸びるのを抑える働きがあり、心室の内側で活躍していた。
この遺伝子を働かなくしたマウスでは交感神経の分布に偏りが生じず、心拍が一時的に止まる異常がみられた。逆にこの遺伝子が心臓で過剰に働くようにしたマウスでは心筋につながる交感神経が全体に少なく、2割が不整脈によると考えられる突然死を起こした。交感神経の適切な分布が不整脈防止に重要なことを示唆する結果だ。
「将来、心筋再生が可能になった時は、交感神経のことも十分考えて治療をする必要がある」と福田さんはいっている。
へぇー、均等に分布していても逆にダメということですか。不均等になるように神経を調節している遺伝子って凄いですね。もしこういったことが「進化」なのだとしたら、どれほどの確率でここまでに達したんでしょうか…。生命の神秘ってやつですね。
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