理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の研究グループは、マウスやサルの傷ついた網膜に薬を作用させ、物を見るのに必要な視細胞の再生を促すことに成功した。神経細胞を助ける役割の「グリア細胞」が分裂し、新たに視細胞ができたという。再生した視細胞が機能すると確認されれば、眼球に薬を注射して網膜を再生させる治療法の道が開ける。11日付の米科学誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」に掲載された。
目に入った光は、網膜の視細胞で感知され、視神経を通じて視覚情報として脳に伝えられる。網膜は一度傷つくと修復が難しく、視細胞が徐々に失われる網膜色素変性という病気は日本に約3万人の患者がいるが、有効な治療法はないという。
グループは、マウスやサルの網膜を取り出し、「Wnt3a」というたんぱく質などを投与することで、網膜のグリア細胞を盛んに分裂させることに成功した。さらに、視細胞が作られる際に必要なレチノイン酸を加え、視細胞になることを確認した。
高橋政代チームリーダー(眼科学)は「マウスやサルでも自然な網膜の再生はごくわずか。研究を治療に生かすには、人でも網膜再生が起きるか調べ、新しくできた視細胞が網膜の神経回路に組み込まれるか確認しないといけない」と、今後の課題を説明している。
たんぱく質の解析が進んでいますね。Wnt3aを投与するだけで、特異的な部分の成長を促し、視細胞までも再生させてしまうとは。ES細胞は用いていませんが、これも再生医学の1つの形、ですね。目の病気は切っても切り離せないところがあるので、多くの人にとってまさしく希望の光となるのではないでしょうか。
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視覚や視力を回復できる技術は素晴らしいと思います。
人間にも応用できると良いですね。