日本中にあふれる「痔」主。その数、成人の約3人に1人といわれ、虫歯に次いで患者数が多い「国民病」だ。俗に寺に入らなければ治らないというほど患者の悩みは深いが、治れば信じられないほど生活は快適になる。それには、まず“敵”の正体を知ること。最近は痛みを伴わない「PPH法」といった手術も行われている。知っているつもりで知らない「痔」のあれこれと、治療法とは?
黒川梅田診療所(大阪市北区)の黒川彰夫院長は、「『痔』とは、肛門の病気の総称。その半数を占める痔核(いぼ痔)は、肛門や直腸下部の内側にできた静脈瘤ですが、実は2足歩行する人間にとって、宿命的な病気なんです」と説明する。
黒川院長の説明はこうだ。肛門は心臓よりも下の位置にあり、もともとうっ血(心臓へ血液を戻す静脈の血流が妨げられ、血液が組織内に異常に増えてたまった状態)しやすい場所。しかも肛門の静脈は、他の静脈にある血液の逆流を防止する弁(バルブ)がないため、「心臓に戻ろうとする血液が逆流し、たまってしまうことがある」。さらに、排便のたびに無理にいきむことで、直腸や肛門の静脈の血行が悪くなり、この結果、肛門から直腸下部の内皮が腫れて血がたまり、たるんだ状態になるのだ。
直腸の内側にできる内痔核は進行すると、排便時に肛門から飛び出すようになり(脱肛)、多量の出血を伴う。排便後に自然に元にもどるならII度、指で押し込まないと戻らないようになるとIII度で、「運動や重いものを持つ、おなかに力を入れるなどで痔核が外に飛び出す」(同院長)。IV度では指で押し込んでも戻らなくなる。
出血は気持ちを萎えさせるばかりか、脱肛が気になると、日常生活の行動も制限されるようになる。脱肛した内痔核に血栓ができて腫れあがる嵌頓痔核は、「ものすごい激痛が走る」(同院長)というから、まさに地獄だ。
基本的に命にかかわる病気ではないことや、恥ずかしさからつい治療が遅れがちな「痔」。だが、早期なら座薬や飲み薬を使った保存療法が中心で、「手術が必要になるのは15%程度」と同院長。最近は、痛みを伴わない手術も開発されている。
昨年、先進医療の認定を受け、混合治療が可能になった「PPH法」はそのひとつ。東葛辻仲病院(千葉県我孫子市)の辻仲康伸理事長によると、麻酔をかけた上で、痛みを感じない直腸の粘膜を処置。「ゆるんだ粘膜を切除するため、痔核が元の正しい位置に吊り上げられ、痔核に注ぐ血流が減少する。脱肛や出血といった症状が消え、痔核も次第に小さくなる。これまでの痔核そのものを取る手術ではなく、『痔』の原因を治す方法」という。
肛門から挿入した自動縫合器を使うため、手術時間は約15分〜20分。日帰り手術も可能。治療費(手術代)は実費だが、その他の費用は健康保険が使え、医療費総額は約20万円だという。
長く「痔」主を続けているアナタ。恥ずかしい、面倒だなどと言わないで、一日も早く専門家の治療を受けてみては?
痔ってそこまで恥ずかしい病気というイメージはないんですよね、最近。性病などのもっと恥ずかしい病気が普及したためでしょうか。嫌な普及の仕方ですが。
痔で悩んでる方、お近くの肛門科へどうぞ。当たり前ですが、医者は見慣れてますから。男子トイレにおばちゃんの清掃員さんがいても別に恥ずかしいとは思わないでしょう?アレと同じ感覚で、病院にいきましょうよ。ひどくなるとそれこそQOLが著しく低下してしまいますから。
関連:医学処 痔の薬を目の腫れ治療に使わないで下さい。