医師不足が深刻な10県にある大学医学部の04、05年の卒業生で、地元の病院に残った医師は約3割にとどまったことが毎日新聞の調べで分かった。各医学部には県内高校出身者が平均で約2割しかおらず、多くを占める県外高校出身者の大半が県外の病院へ流出しているためだ。国は医師確保対策の柱として、この10県の大学医学部に対し、08年度から最大10人の定員増を認めているが、各県の担当者からは「県内高校出身者が少ない中で、どれほど効果があるのか」と疑問の声が上がっている。
調査は3〜4月、定員増を認められた青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨、長野、岐阜、三重の10県にある大学医学部を対象に実施。05、06年度入学者の出身内訳は全県から、04、05年度卒業生の進路状況は5県から回答があった。
卒業後の進路については、回答のあった5校の平均で、04年度は35%、05年度は33%しか県内に残っていない。出身高校別で見ると、県内出身者は約7割が県内に残るが、県外出身者は約2割しか残らなかった。
入学者のうち県内高校出身者が占める割合は10校平均で、05年度が22%、06年度が25%。福島県立医大が06年度に40%となった以外は、2割前後の大学が大半を占めた。山形大と信州大は2年連続で2割未満だった。
弘前大医学部(青森県弘前市)では、県内高校出身者が県内に残る割合は、04年度が74%、05年度が77%。一方で、県外高校出身者は、04年度17%、05年度12%と非常に低い。佐藤敬医学部長は「他県から入ってくる学生は地元に帰る傾向が強い。県外出身の人も県内に残ってくれればありがたいが、今のところ地元出身者に頼るのが現状だ」と話している。
やはりマッチングシステムの弊害ですかね。マッチングというのは、卒後の研修先を学生が選べるシステムなのですが、それで都内の大学病院や有名病院を選択できるようになったんです。もちろんいいところに行くためには高い学力(学歴ではない)を要求されるわけですが。
はっきり言って、大学病院のレベルが同じ程度だったら、地方より都内のほうを選ぶ人が多いと思います。それは社会で生きるうえでどうしようもない部分といいますか…。もちろん田舎ならではの良さはありますが、地方で勉強した学生ほど、都会という憧れ意識は強いのではないでしょうか。誰しも遊びたい心は持ちますし、田舎の良さを認識できるほど達観してはいないでしょうし。別にどこで医療しても変わらない……いや、むしろ医療を行う環境でいえば地方こそやりやすいように思うんですけどね。どうしてもストレスが溜まってしまいがちな医療従事者を支える環境づくりとか、何かに特化した良い医療現場とか、そういった工夫が求められます。
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