核磁気共鳴画像法(MRI: Magnetic Resonance Imaging)の研究でピーター・マンスフィールドと共に2003年のノーベル生理学・医学賞を受賞したポール・ラウターバー博士が27日、米イリノイ州にある自宅で死去した。77歳だった。
人体の断層撮影の手法してはMRIの他にX線を使ったCTスキャン(CT: Computed Tomography)が今でも一般的に利用されている。しかし、X線を利用した断層撮影の場合、通常のX線撮影よりも被爆量が非常多く、放射線照射による副作用が指摘されてきた。
一方、MRIによる断層撮影の場合、核磁気共鳴の原理を使うためにX線のように放射線被曝がないことや、画像のコントラストがX線よりも鮮明など数々の優位性があり、ラウターバー博士の研究結果から生み出されたMRIスキャンの登場は医療現場に革命をもたらした。
核磁気共鳴の原理そのものは戦前から研究が行われており、最初の核磁気共鳴(NMR)信号は1938年にイシドール・ラビによって検出が成功。ラビはこの業績によって1944年にノーベル物理学賞を受賞した。しかし、NMR信号から画像を作ることは困難を極め、核磁気共鳴の原理を利用して画像を作る方法はラウターバー博士によって1973年になってからようやく発表された。 画像を拡大する
MRIのおかげでどれほどの人の命が助かったことか……。ポール・ラウターバー博士、かけがえのない発明を人類にもたらしてくれてありがとうございます。ご冥福を心からお祈り申し上げます。