心停止を来たした患者の蘇生を行う際に、胸部圧迫に加えてマウスツーマウスの人工呼吸をすると、胸部圧迫のみの場合よりも効果が低くなることが、駿河台日本大学病院救急医学助教授の長尾建氏らの研究によって明らかにされた。この知見は、英医学誌「Lancet」3月17日号に掲載された。
今回の研究では、心停止で倒れた際に、居合わせた人の応急処置を受けた成人4,000人以上について調べた。その結果、神経機能が比較的良好であったのは、心停止から4分以内に胸部圧迫のみを受けた人では10.1%であったのに対して、人工呼吸も受けた人では5.1%であった。心拍異常や呼吸停止を来たした患者でも、胸部圧迫のみではこれに近い効果がみられたが、人工呼吸を加えることによる利益を示す根拠は認められなかった。
米アリゾナ大学サーバー心臓センターのGordon Ewy博士によると、人工呼吸を取り入れた場合、身体の接触に対する躊躇や、技術の複雑さから、蘇生そのものをしたがらない人が多いという。また、人工呼吸を行うと一時的に胸部圧迫が中断されることになるため、圧迫にかける時間が半減してしまう。米国心臓協会(AHA)では、すでに2005年11月に心肺蘇生法(CPR)のガイドラインを改定しており、人工呼吸2回あたりの圧迫回数は15回から30回に変更されている。
米国では年間45万人が心停止を来たしていると推定されており、胸部圧迫のみを行う人がもっと増えれば、結果に大きな違いが出るはずだとEwy氏は述べている。別の専門家は、ガイドラインの変更などは重要な問題ではないと指摘。今回の研究からいえるのは、どのような蘇生法でも何もしないよりはいいということだと述べ、人工呼吸に自信がなければ、胸部圧迫だけでも試みるべきだとしている。
なるほど…。
胸部圧迫は、心臓を動かすことで血流をつくり、それゆえに脳へ血液、つまり酸素を送ることができます。で、おそらくですけど、気道が確保されてさえいれば、胸部圧迫の時に空気は出入りするんじゃないですかね。要するに吹き込まなくても肺で酸素交換はされている、と。もちろん人工呼吸したほうが酸素交換は円滑に進むんでしょうけれど、そんなことよりも胸を圧迫して脳へ酸素を送ってやるほうが先決、ということなのでしょう。
しかしデータがまだあまり出てないみたいなので、とりあえず倒れている人をみたら胸部圧迫30回に人工呼吸2回で。
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