北海道大などの研究チームが、サケの皮のコラーゲンから人工血管を作り、ラットの大動脈部分に移植したところ、2週間以上の生存が確認された。13日から横浜市内で始まる日本再生医療学会で発表する。海洋性動物のコラーゲンから人工血管を作成し、機能が確認されたのは世界初という。研究チームは、サケからヒトに感染するウイルスが報告されていないことなどから、安全性も高いとみている。
水産加工後に大量に廃棄される天然のサケの皮は北海道で年約2000トンに上る。ここからコラーゲンを抽出した場合、年約600トンを採取できるという。また、従来の人工組織は、牛やブタのコラーゲンを使っていたが、BSE(牛海綿状脳症)など感染症による危険性も懸念されている。
このため、研究チームは廃棄量が大きく、安全性も高いサケの皮に注目し、再生医療への応用を目指した。
課題はサケのコラーゲンが熱に弱く、19度で溶けてしまうことだった。そのままではヒトの体内に移植できないため、コラーゲンの構造を糸状の塊に変えたり、構成する分子間の結合を強めるなどの処理を行い、溶け始めの温度を55度まで上げることに成功した。
耐熱性が上がったコラーゲンで内径1.6ミリ、厚さ0.6ミリのチューブを作り、今年2月下旬にラットの腹部の大動脈へ移植した。その結果、チューブは心臓の拍動に合わせて伸び縮みし、元の大動脈同様の強度と伸縮性が確認された。
研究チームの永井展裕・北大創成科学共同研究機構特任助手(移植医療)は「今後イヌなどの大型動物で実験し、将来はヒトの心筋梗塞治療に使える細い口径の人工血管開発を目指したい」と話している。
ウシやブタなどの、比較的人間に近い臓器をもつ動物でなくても、人工血管ならばサケなどの魚からも作り出せるとは…恐るべし。構造が異なる分、BSEの心配もないでしょう。案外いいところをついていると思います。人工血管の応用が効けば、心臓系の疾患をサポートするだけでなく、下肢の静脈瘤などに対しても使うことができるかもしれません。
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