カリフォルニア大学バークレー校の研究グループは、男性の汗に含まれる化学物質の匂いをかいだ女性には、重要なホルモンの値が上昇し、普段よりも性的興奮を覚え、心拍数も増えるなどの変化が見られたと発表した。
ヒトが異性のホルモンに影響を及ぼす“匂い”を分泌するという、初の直接的な証拠を示す例だという。この研究結果は今週発売の神経科学の専門誌に掲載される。
研究では、男性の発する伝達物質と見られているアンドロステンジオンに焦点をあてた。これまでの研究で、このアンドロステンジオンの匂いは女性の気分に影響を及ぼし、性的・生理的刺激をもたらし、脳を活性化することが確認されていた。だが、ホルモン値への影響はあまりはっきりと確認されていなかった。テストステロンの前駆体であるアンドロステンジオンは、男性の汗や唾液、精液の中に認められ、麝香のような香りがする。
研究グループのリーダーであるクレア・ワイアート氏は7日、インタビューに対して、「研究結果を見ると、汗の匂いをかぐことでさまざまな反応が引き起こされる可能性がある、ということが分かります」と語った。
研究グループでは、バークレー校の女性の学部学生48人(平均年齢およそ21歳)に容器に入ったアンドロステンジオンの匂いを20回かがせた後、彼女達の唾液中のホルモン、コルチゾールの値を測定した。コルチゾールは、身体が適切な覚醒や幸福感を維持したり、ストレスに反応したりする機能を助けるために分泌されるホルモンである。
アンドロステンジオンの匂いをかいだ女性たちのコルチゾール値は、匂いをかいでおよそ15分以内に上昇し、最大1時間高い状態を維持した。また、以前の研究結果同様、女性たちは気分が良くなった、性的興奮を覚えたと報告し、血圧の上昇、心拍数や呼吸数の増加も認められた。
比較のために、女性たちには製パン用イーストの匂いもかがせたが、同じ効果は見られなかった。研究者たちは、ヒトが分泌した特定の化学物質の匂いがホルモン値に影響する、と示されたのは今回が初めてだと語った。女性たちは、アンドロステンジオンに直接触れることはなかった。
また、研究に協力してもらった女性は全員、異性愛者を選んだという。これは、同性愛者の女性だとこの男性ホルモンに異なる反応を示すのでは、という懸念があったためだ。
ワイアート氏は、男性の汗の中の特定の物質が女性のホルモン値に影響を及ぼすと証明されたのは、今回が初めてだとする一方で、汗に含まれる他の物質も似たような作用をもたらす可能性があるとも指摘した。
研究では、コルチゾール値の上昇によって気分の高揚が引き起こされたのか、それとも気分に変化が生じたことによってコルチゾール値が上昇したのかを確認することはできなかった。
また今回の研究結果は、アジソン病患者などコルチゾールを必要とする人々に対して、コルチゾール分泌を刺激するより良い方法があることを示唆するものでもあるという。コルチゾールを錠剤で服用すると、消化性潰瘍や骨粗鬆証、体重増加やうつ病などの副作用がある。研究者たちは、この錠剤の代わりにアンドロステンジオンのような化学物質を使ってコルチゾール値に影響を与えることもできるのでは、と考えている。
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異性の汗が女性にとって好意を引き起こすというのは、以前から言われていたことです。実際日本での実験でも同様の結果が出たんじゃなかったかな。
しかし、よくわからんのですが、副腎皮質以外の部分から放出されたアンドロゲンに対しては副腎皮質のコルチゾール分泌が増えるということでしょうか?なんかちょっとこんがらがってきました…。
アジソン病というのは慢性副腎皮質機能低下症のことで、要するに副腎皮質(球状層、束状層、網状層)から分泌されるホルモン(糖質コルチコイド:コルチゾール、鉱質コルチコイド:アルドステロン、アンドロゲン)が分泌低下することによって、慢性的な脱力、易疲労、全身倦怠感、食欲不振、筋力低下、皮膚の色素沈着などがみられる病気です。
副腎皮質のホルモンは脳下垂体前葉から分泌されるACTHというホルモンによって制御されていまして、普通なら、アンドロゲンが増加したらACTH分泌がネガティブフィードバックで抑制されるためにコルチゾール分泌も抑制されると思うんですが、そう考えるのは短絡的なんでしょうか。んー、少しホルモンについて再度勉強が必要なようです。
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