革新的な神経再生技術を用いることにより、義腕を使用する患者が、その動きを"感じる"ことが可能になったという報告が、英医学誌「The Lancet」2月3日号に掲載された。この技術は、義腕の使用法を身につけるのを容易にするほか、イラクやアフガニスタンから帰還した負傷兵など、腕を切断した患者の生活改善に役立つという。
米リハビリテーション研究所人工四肢神経工学センターのTodd Kuiken博士らによる今回の報告は、顕著な機能改善の認められた1人の患者についてのもの。この患者はオートバイの事故で腕を失った24歳の女性で、「標的筋肉神経再支配」と呼ばれる以下のような新技術が用いられた。
切断前に腕につながっていた神経には、切断後も腕の感覚が残っている。この神経を胸部の筋肉と皮膚に移植することにより、患者が「手を握ろう」と思うと、その信号が脳から脊髄を通って伝わり、手の代わりに胸部の筋肉の一部が収縮する。同様に、胸部の皮膚に触れると、患者が手を触られているように感じることも可能になっている。義手に付けたセンサーが胸部の皮膚に情報を送ることにより、患者は何かに触っているという感覚や、どのくらいの強さで握っているか、どのくらい熱いかなど、義手で圧力や温度を感じることができる。
四肢切断患者の多くは、重さと使用の難しさから、義肢の使用に消極的だという。新しい軽量の義肢に今回の技術を組み合わせることによって、使用が容易になることが期待される。心理的な影響も重要で、義手で物に触れ、感じることができるという事実は、情動面での適応性に大幅な向上をもたらし、義肢を体の一部として受け入れることにつながるという。
Kuiken氏は、年内にも軍人や女性患者に対してこの処置を実施したいという。研究チームはさらに、この技術の脚への応用を目指し、研究の幅を広げている。他の専門家も、この技術が訓練時間の短縮と操作の向上をもたらすと述べており、最新の義肢にこの技術を合わせることによって、義肢の総合的な進歩につながるとしている。
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おお、胸部の皮膚、筋肉に感覚を代替的に伝えることで調節しやすくなるというシステムですね。確かに自分で触っている感触がないと、どうにも作用しづらいですからね。これはなかなか良い手法。
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