2007年02月10日

胸腺でT細胞を教育していたのは「クローディン」と呼ばれる分子

リンパ球の「教師役」特定 京大グループ、英誌に発表

 免疫反応の司令塔となるリンパ球(T細胞)に、攻撃してはいけない「自己」を教える「教師役」の細胞を、京都大医学研究科の湊長博教授(免疫学)、浜崎洋子助手らが胸腺の細胞から特定した。免疫細胞の教育システムを解明する大きな手がかりとなる成果で、英科学誌「ネイチャーイムノロジー」電子版で5日、発表した。

 T細胞の前駆細胞が「学校」である胸腺で成熟分化する時、自己と非自己を見分ける能力をつけるために、あらかじめどのような物質が自身の体内にあるかを知る必要がある。胸腺の髄質で作られるタンパク質AIREの働きによって、本来は胸腺以外の組織や細胞でつくられるさまざまな物質が、攻撃してはいけない「教材」として網羅的につくられていると考えられている。

 この仕組みがないと、T細胞が自己の物質を異物として攻撃し、自己免疫性の糖尿病などを発症する。しかし、この「教師役」の細胞がどんな細胞なのか謎だった。

 湊教授らは、上皮細胞や内皮細胞で細胞同士をぴったりと接着する分子クローディンが、胸腺内部の髄質上皮細胞で作られていることに着目。同細胞がAIREやインスリンなども作っていることを突き止め、胎生期にクローディンを持つ上皮細胞の一部が分化してできることも分かった。

 さらに、クローディンは細胞を接着するだけでなく、教師役として生徒であるT細胞と情報をやりとりするという、これまで知られていない機能があるかもしれないという。湊教授は「教師役の細胞の一つが見つかり、起源も分かったことで、T細胞をうまく教育するために、どのように胸腺という学校がつくられているかという免疫学の重要なポイントの解明につながる」と話している。

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 胸腺で行われる「教育」というのはなかなか面白いんですよ。T細胞という免疫システムを担当している細胞は、「外から入ってきた異物などの抗原は認識するけれど、自分自身の抗原には認識しない」ようにしなければいけません。そうしないと、自分自身を攻撃してしまうことになりますからね。

 まず「自分のMHC分子(主要組織適合抗原)を自分であると認識する」ことが重要となります。他者と自分とを区別できないようでは免疫として機能しませんからね。これができるT細胞が選ばれます。できないT細胞はアポトーシス、つまり自己死を迎えます。このことを「正の選択」といいます。

 次に「自分がもとからもっている自己抗原を無視できる」ことが重要です。自己抗原を認識してしまうT細胞は、アポトーシスを起こします。これを「負の選択」といいます。

 こうしたスパルタ教育によって、「自分のMHCは自分であると認識できて、加えて自己抗原の提示には反応しないT細胞」だけが生き残ることができるのです。凄いですね。ちなみに生き残れるのは1%以下だそうです…。

参考:休み時間の免疫学

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posted by さじ at 15:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 生理
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