横浜市立大学大学院医学研究科病態免疫制御内科学教室の石ヶ坪 良明教授(厚生労働省ベーチェット病班 研究代表者)らの研究グループはゲノムワイド関連解析にて厚生労働省の特定疾患であるベーチェット病の新しい疾患感受性遺伝子と発症のメカニズムを発見しました。
ベーチェット病はぶどう膜炎、皮疹、口腔・陰部潰瘍など全身に発作的な炎症を繰り返す難治性疾患で、厚生労働省の特定疾患に最初に認定され、平成22年3月末時点で、受給者数は17,290人です。患者は日本・トルコなどのシルクロード沿いのアジアに多く、発症には環境因子と遺伝素因の両方が重要と考えられています。最も強い遺伝素因としてヒト白血球抗原(HLA)-B*51(たくさんあるHLA-Class I の中の一つ)が知られていますが、病気における役割はよくわかっていません。ベーチェット病はときには失明に至り、病態解明が急がれます。
石ヶ坪教授、同教室桐野洋平助教、同大眼科水木信久教授ら横浜市大グループは、米国国立衛生研究所、トルコイスタンブール大学と国際共同研究を行い、桐野助教を中心として、日本人・トルコ人計約5000例の患者・健常人の検体を解析しました。トルコ人ゲノムワイド関連解析の情報を、「インピュテーション法」を用いて統計学的に増幅して再解析したところ、新規の疾患感受性遺伝子CCR1 (ケモカイン受容体)、STAT4 (転写因子)、KLRC4 (ナチュラルキラー細胞受容体)、ERAP1 (小胞体アミノペプチダーゼ)を同定しました。
通常異なる染色体上に存在する遺伝子間には相関は認めませんが、ERAP1 とHLA-B*51 両者の素因を持つとリスクの相乗効果を認めました(エピスタシス)。ERAP1 とHLA-Class I とのエピスタシスは強直性脊椎炎と乾癬でも報告されています。ERAP1 は小胞体に存在し、HLA-Class I に乗せるためにペプチドを短くする働きがあることから、ペプチドのヒト白血球抗原への提示過程がこれらの疾患で極めて重要であることを示しています。CCR1 とSTAT4 近傍のSNPはこれらの遺伝子のmRNA発現量と関連していることを明らかにしました。
ベーチェット病はかなりの難病ですが、しっかりとした治療の確立に至っていません。日本人に多い疾患なんで、日本がリードして解明してほしいですね。