2012年12月19日

細胞の自食作用はシンタキシン17が関与していることを発見する

東京医科歯科大、細胞の自食作用に必要な分子「シンタキン17」を発見

 東京医科歯科大学は、細胞内の一部を取り囲んだ袋状膜構造「オートファゴソーム」に細胞内の分解専門小器官「リソソーム」が融合することで行われる細胞分解システムである「オートファジー(自食作用)」は、オートファゴソーム表面に「SNARE(スネア)」と総称される分子群の1種である「シンタキシン17」が呼び寄せられることで働くことを発見したと発表した。

 成果は、東京医科歯科大大学院 細胞生理学分野の水島昇客員教授らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、12月6日付けで国際科学誌「Cell」オンライン版に発表され、翌7日に印刷版に掲載された。

 細胞が健全であるためには、細胞内のタンパク質や小器官が適切に分解され、常に新しい状態に保たれることが重要だ。オートファジーは、そのために必要な細胞内の大規模分解系の1つで、さらに細胞の新陳代謝、胚発生、神経変性抑制、腫瘍抑制、栄養飢餓適応反応、細胞内病原体分解などにも重要な細胞機能であり、現在注目されている生命現象の1つである。

 その仕組みは、細胞内の一部を取り囲んだ袋状膜構造であり、直径約1μmのオートファゴソームが形成されるところから始まる。次に、分解専門の小器官であるリソソームがオートファゴソームに融合すると、オートファゴソームの内容物が分解されるという仕組みだ。しかし、これまで細胞質を取り囲んだオートファゴソームが、どのようにリソソームと融合するのか、その部分がわかっていなかったのである。

 今回の研究では、オートファゴソームが完成すると、シンタキシン17がオートファゴソーム表面に呼び寄せられることが発見された。シンタキシン17は、細胞内の小器官や小胞同士を融合させるのに必要な、SNARE分子群の1つだ。シンタキシン17はリソソームの表面に存在する「VAMP8」という別のSNARE分子と結合し、それがオートファゴソームとリソソームの融合を引き起こすのである。



 ミクロレベルの出来事。誰の手も借りずにこういう生物としての進化を遂げた結果を、ようやく解明しているというのが、なんか凄いですよね。ホント、生命が生まれたのは奇跡だったんだなぁと思わざるをえない。

 逆にそろそろ、生命を分子的に作り出す事も可能になりつつあるんじゃないかという期待も感じさせます。自食作用そのものは有名ですが、その機序をより細かい点で解明できたのは素晴らしい業績です。
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posted by さじ at 04:22 | Comment(0) | 循環
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