黒褐色のあざが生まれつき体の広範囲にみられる「巨大色素性母斑」。外見上の問題に加え、悪性化して皮膚がんになりやすい危険性が潜んでいる。従来、患部を切除して縫い合わせたり、体のほかの部分の皮膚を移植したりする治療が行われてきたが、母斑が大きすぎる患者には適さないなどの難点があった。そこで、患者本人の皮膚片から作った培養表皮を移植に用いる再生医療を新たな治療の選択肢にしようと、国内4施設が医師主導治験を開始し、患者に参加を呼び掛けている。
実施するのは国立成育医療研究センター (東京都)、大阪市立総合医療センター 、独協医大病院 (栃木県)、聖マリアンナ医大病院 (川崎市)。
医師主導治験は、採算性などを理由にメーカーが実施を見送っている薬や医療機器の治験を医師が主体になって進め、臨床現場への早期導入を目指すもの。今回の計画では約1年間で10症例を目標に治療を施し、有効性や安全性を評価する。
調整役を担う国立成育医療研究センターの金子剛部長によると、巨大色素性母斑は先天性のあざで、 大人になった段階で直径20センチ以上のものを指す。発生頻度は2万人に1人。メラニン色素を作る母斑細胞が皮膚の表面近くに集中して生じ、体のどこにでも現れる。
見た目も問題だが、特に注意を要するのが悪性化。「日本人では患者の3〜4%が悪性黒色腫などになる。その大半は思春期までに発症する」と金子さんは解説する。
このため治療では、幼少期に母斑細胞を極力除去し、悪性化を予防することが求められる。母斑がある程度の大きさまでなら手術で切除し、周囲の皮膚を縫い寄せる。やや大きめなら、あらかじめ周囲の皮下にシリコーン製の袋を埋め込み、数カ月かけて徐々に生理食塩水を注入して皮膚を拡張、のびた皮膚を切除部分の縫い合わせに使う。
母斑がさらに大きい場合は、体のほかの部分から採取した正常な皮膚を母斑の切除部分に移植する方法がとられるが、健康な皮膚にまで傷痕が残ってしまうのが欠点だ。
「ほかにもレーザーを照射して母斑細胞を破壊する方法や、器具を使って患部の皮膚を剥ぎ取る方法があるが、それぞれ長所、短所があり、治療に難渋している」と金子さんは話す。
そこで注目したのが重症のやけどの治療で実用化している培養表皮。米国で開発された技術を利用し、日本でも再生医療ベンチャーが製品化している。まず、患者本人から切手大の正常な皮膚を採取し表皮細胞を分離。これをマウスの特殊な細胞と一緒に3〜4週間培養すると、患者の細胞のみでできた80平方センチのシート状の表皮が20〜30枚も作れる。治験では、母斑を除去した箇所に培養表皮を移植し、生着するかどうか観察する。
11月上旬、実施施設の一つ、大阪市立総合医療センターを母親に連れられた幼い女の子が受診した。背中から脇腹にかけて大きな母斑。別の病院でレーザー治療を受けたが、結果は思わしくない様子だった。母親は「早く培養表皮の移植を受けさせたい」と、治験参加を強く望んだという。
本人の皮膚を培養しての移植となると、聖マリアンナ医科大学の形成外科が有名ですが、今回の治験は4施設。(調べたところ、聖マリアンナ医科大学では既に似たようなことをやっているようですね。)
赤ちゃんの頃からあるため、整容の面からもやっぱりうまく治療してあげたいものです。
形成外科というと、美容形成ばかりとりあげられていますが、こういう皮膚疾患とか、小さい頃からある見た目上の問題を治療したりとか、そういう大学病院や大きな病院でやっているような治療であることを、もっとアピールすべきだと思うんですよね。
正直美容形成は個人的にもあまり良いイメージはもってません。広告など大々的に行うし、アフターケアもしっかりしていないようなところも多いですから。でも、このブログで何度も書いてますけれど、大学病院や総合病院で形成外科をやっている医師は尊敬しています。形成外科医の技術はまぎれもなく一流ですし、その細かい治療は他の外科医も一目置いているところです。
よく大きな手術で、細すぎる血管を縫う時などは、そこだけ形成外科医が手術に入ります。知ってました?実は凄いんですよ。