アルツハイマー病の早期発見と予防の方法が模索される中、これまでで最も早期の兆候を発見したとする研究が、6日の英医学専門誌ランセット(The Lancet)に掲載された。
認知症の症例の3分の2を占めるアルツハイマー病。発症率は200人に1人で、高齢化に伴い世界的に患者数が増えている。治療面で大きな問題となっているのが、病気が進行して回復不可能なまでに脳が変化してしまった後でないと症状が現れない点だ。
米アリゾナ(Arizona)州にあるバナー・アルツハイマー病研究所(Banner Alzheimer's Institute)のエリック・レイマン(Eric Reiman)氏率いる米国とコロンビアの共同研究チームは、親戚関係にありアルツハイマー病の遺伝的素因を持つ18〜26歳のコロンビア人44人の脳を調べた。
この親族に伝わる遺伝子変異は、老年期になってアルツハイマー病を発症させる通常タイプと異なり、40代で発症させる珍しい変異で、44人中20人に確認された。検査当時の認知能力には全員、何の問題もみられなかった。
被験者たちの脳をスキャン画像で比較したところ、遺伝子変異のあるグループは、ないグループに比べて脳の特定の部位の灰白質が少なかった。また、アルツハイマー病患者の脳に蓄積してアミロイド斑(プラーク)を形成するとされる「アミロイドβ(ベータ)蛋白」の脳脊髄液中の濃度は、遺伝子変異のあるグループのほうが高かった。
ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)認知症研究センターのニック・フォックス(Nick Fox)氏はこの発見について、「症状が現れる20年以上前から神経変性が始まっていることを示しており、これまでのMRIによる研究で示唆されていたより幾分早い」とコメント。また、ランセット誌も「より早期の発見と予防治療の臨床試験につながると期待される」との声明を発表している。
一方、今回の研究はアルツハイマー病の従来の進行モデルに疑問を投げかけるものでもある。フォックス氏は「複数の方面から」従来モデルを疑問視した研究だと述べ、中でも「(脳を損傷させる原因とみられている)プラーク蓄積の兆候よりも先に神経変性が起きているようだ」と指摘。また、今回の研究結果は被験者数が少ないため慎重に扱う必要があり、しかも、より一般的な老年期に発現するアルツハイマー病にはあてはまらない可能性もあると述べている。
実際、画像でアルツハイマーを診断することが多いのですが、アルツハイマーっぽい症状が出てても、画像ではまだそこまで変異しておらず確定診断が微妙なケースというのも結構多いですからね。こういった早期発見が出来れば、よりアルツハイマー治療薬の早期導入も出来るようになるでしょう。