花壇や家庭菜園で使う腐葉土に含まれるレジオネラ属菌が原因となり、肺炎を引き起こすことがある。この時期は、落ち葉を集めて腐葉土を作る機会が多いため、専門家が注意を呼びかけている。
昨年1月、北関東に住む60歳代の男性がレジオネラ肺炎で亡くなった。男性は前年の11月、温泉旅行に出かけ、帰宅後、体調が悪化。せきや高熱に加えて、衰弱が激しく、病院で集中治療を受けたが、回復しなかった。
地元の衛生研究所が調査したところ、男性が旅行前後に作った腐葉土に含まれるレジオネラ属菌に感染した可能性が高いことがわかった。男性のたんから検出されたレジオネラ属菌と、腐葉土から検出されたレジオネラ属菌の遺伝子の型が一致。旅行先の温泉や男性宅のシャワーの水も感染源として疑われたが、レジオネラ属菌は検出されなかったという。
調査担当者によると、男性は、自分で腐葉土を作って家庭菜園で使っていた。その際、腐葉土中のレジオネラ属菌を吸い込んで、肺炎になったとみられる。「男性には生活習慣病の既往歴があり、免疫力が弱っていたことも重なって、肺炎を発症したのではないか」と担当者は話す。
レジオネラ属菌は、湿った土壌や河川などに生息している。不衛生な浴槽でも増殖し、数年前、各地の入浴施設で集団感染が相次いだ。腐葉土が感染源と推定される事例も、国内で数件報告されている。
国立感染症研究所主任研究官の倉文明さんによると、レジオネラ属菌は、水温36度前後で増殖しやすい。「湿っている腐葉土も、その状態に近い」と倉さんは指摘する。
健常者が感染することはまれだが、高齢者や幼児、免疫力の弱っている人などは感染する可能性がある。腐葉土を作ったり触ったりする際には〈1〉マスクや軍手をする〈2〉作業後、せっけんで手をよく洗う〈3〉体調の悪いときは作業を控える――などの対策が大事だ。
倉さんは「レジオネラ肺炎は進行が早く、診断が遅れると、命にかかわることもある。通常の肺炎と区別して治療しなければならないため、発症前に腐葉土を扱ったことなどがあれば、医師に伝えてほしい」と、注意を呼びかけている。
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レジオネラ肺炎といえば温泉による集団感染が有名ですが、結構身近な腐葉土にも存在します。肺炎は命取りになりますので、ご注意下さい。手洗いうがいは基本です。
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