化学物質のグルタルアルデヒド(GA)を含む殺菌消毒剤を使って消毒・洗浄作業中、化学物質過敏症になったのは勤務していた大阪掖済会病院(大阪市西区)が対策を怠ったためとして、同区の元看護師、岡沢丸美さん(51)が病院を運営する社団法人日本海員掖済会(東京都中央区)に慰謝料など2488万円を求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。大島真一裁判長は「防護マスクやゴーグルの着用を指示するべきだった」と病院側の安全配慮義務違反を認定。後遺障害の逸失利益などを含む1063万円の賠償を命じた。
労働省の化学物質過敏症による後遺障害分も認めたのは初めて。労災認定でも基準がなく、判決は同じ症状を訴える患者の救済の枠組みを広げそうだ。
判決によると、岡沢さんは94年から同病院に勤務。検査科に配属され、換気が不十分な部屋でGAを含む薬剤で内視鏡などの洗浄などをしていたが、98年ごろから口内炎や、目、鼻の異常が起き、01年に退職した。その後も排気ガスやたばこの煙などでも症状が出て、04年に化学物質過敏症と診断された。
大島裁判長は、化学物質過敏症の発症を「GAに暴露した結果」と認定。その上で、▽GAの危険性は95年の医療従事者へのアンケート調査などで具体的に指摘されていた▽同病院の医師が98年、岡沢さんが訴えた鼻の刺激症状から、GAが原因と推定していた――ことなどを挙げ、「刺激症状が一過性か、より重篤になるかは定かでなかったのだから、原因の除去や軽減の措置を講じるべき義務があったのに、防護マスクの着用などを指示しなかったのは、使用者としての適切さを欠く」とした。
損害額の認定では、化学物質過敏症により医療現場での勤務が不能になったことなどを考慮し、後遺障害等級12級に相当する逸失利益(517万円)や後遺障害慰謝料(280万円)を含め支払いを命じた。
同病院側は「化学物質過敏症は原因解明が十分でなく、因果関係を判断する根拠がない」と主張していた。岡沢さんは労災認定され、治療費の給付決定は受けていた。
▽大阪掖済会病院の話 判決を見て対応を検討したい。
▽柳沢幸雄東京大教授(環境学)の話 化学物質過敏症を後遺症にまで踏み込んで認定したのは画期的だ。消毒薬自体は重要だが、病院側に予防原則の徹底を迫った点でも大変意義深い。こうした化学物質を使う看護師らは何らかの症状を訴えていると想定され、情報を集め早期に対処するシステム作りが必要だ。
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うーむ。病院側の対応が遅れたとはいえ、今まではどこも対策を講じていなかったというのが現実でしょうね。充分損害賠償には価すると思いますが。医師、看護師を守るために職場を整えることも必要です。
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