受精卵を全く、あるいはほとんど使わずに、再生医療で期待される「万能細胞」を作ろうという研究が、国内で盛んに進められている。政府の総合科学技術会議は受精卵やクローン胚を「生命の萌芽」と位置づけており、宗教界の一部には受精卵などの使用に強い抵抗がある。受精卵を使わなければ、こうした生命倫理問題が回避できると期待されている。
様々な組織や細胞になり得る万能細胞は、事故や病気で失われた機能を回復する再生医療の焦点だ。受精卵が分割を繰り返した「胚盤胞」を壊して作る胚性幹細胞(ES細胞)が代表格だ。
だが、理化学研究所(神戸市)の若山照彦チームリーダーらは、マウスの未受精卵に化学物質で刺激を与えて分裂を起こさせ、未受精卵からのES細胞を作った。さらに、その細胞核を別のマウスの未受精卵の核と置き換えて、再びES細胞を作る「2段階方式」を編み出した。
2段階目のES細胞が特定の神経などに分化する能力は、1段階目のES細胞の3〜4倍になった。未受精卵からのES細胞は、受精卵からのES細胞より分化能力が低いのが難点だったが、若山さんの2段階目は受精卵ES細胞の最大7割程度の分化能力を示した。
一方、京都大再生医科学研究所の多田高・助教授らのグループは年明けにも、受精卵ES細胞に体細胞を融合させて、万能細胞にする研究を始める。すでにマウスでは成功している。この手法なら、受精卵の破壊は最初にES細胞をつくる時だけで済む。
同じ再生研の中辻憲夫教授らは、未受精卵からのES細胞を別々に100株用意すれば、拒絶反応に影響するHLA型(人の白血球型)をほぼそろえることが可能だとする分析結果をまとめた。日本人の90%が、自分に合ったHLA型のES細胞からつくった細胞や組織を使うことで、拒絶反応の心配が少ない移植を受けられるという。
中辻さんは「未受精卵からES細胞を作る研究は、米国でも積極的に進められている。今後、ES細胞バンクの設置が重要な課題になるだろう」と言っている。
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倫理の問題がなければ、今の医学は加速的にスピードアップするでしょう。それこそ戦争における武器の開発が化学を進歩させたように。ES細胞も自由な研究が進めば治療として劇的な効果を上げる可能性があるんですが、どうにもうまくすすみませんね。この技術はまさに起爆剤となる可能性があります。受精卵でなければさすがに誰も文句は言えません。
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