東京慈恵会医科大と自治医大の研究チームが、ラットの胎児の体内にヒトの骨髄液由来の幹細胞を埋め込み、ヒトの腎臓の一部(糸球体と尿細管)を作ることに世界で初めて成功した。その組織を別のラットの腹部に移植したところ、移植を受けたラットの血管が入り込み、通常のラットの腎臓の10分の1の大きさまで成長した。重い腎臓病に苦しむ患者が多い中、患者自身の細胞を使って人工的に腎臓を再生し、移植後も機能させる可能性につながる成果として注目される。
研究チームは、免疫機能が確立されていない動物の胎児では、他の個体の組織への拒絶反応が低く、急速な臓器生成能力がある点に着目。
ヒトの骨髄液に含まれる、さまざまな臓器の組織になる能力がある幹細胞を、臓器が出来る前の胎児ラット(受精後11・5日目)の腎臓が作られる部分に埋めた。2日後、腎臓の主な機能を担う糸球体と尿細管に発達し、血液から尿をろ過する能力も確認できた。
さらに、この組織を別のラットの腹部の臓器を覆う「大網」と呼ばれる膜に移植したところ、組織内の糸球体に向かって新しい血管が伸び、移植された組織が成長した。
チームによると、将来的には、重症腎不全の患者の骨髄幹細胞をブタなど、より大きなサイズの動物の胎児内で腎臓の初期段階まで成長させることを計画している。成長した組織を再び患者の体内に戻せば、大網から血管が伸びて尿を作ることができるようになり、人工透析治療や他者からの腎移植に頼らなくても済むとみている。
今後、組織を移植する際、異種の動物が持つウイルスの感染をどう防ぐかという課題が解決されれば、実用化の可能性が高まるという。
◇ドナー不足解決目指す−−研究チームの横尾隆・東京慈恵会医科大助手(腎臓高血圧内科)の話
自分自身の遺伝情報を持った臓器を再生して移植する新たな医療の可能性を、動物レベルで確かめることができた。現在の深刻なドナー(臓器提供者)不足を解決する一つの方法にしたい。
◇方向性示す糸口に−−園田孝夫・大阪大名誉教授(日本臓器移植ネットワーク西日本支部長)の話
実際機能するには、尿を体外へ排出するために腎盂や尿管の再生も必要だ。また、より大型な動物での成功が求められる。将来の方向性を示す糸口になるのではないか。
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こりゃ凄いですね。腎臓レベルのものが再生できるかもしれないとは。一番難しいと思われる濾過機能もバッチリのようです。腎臓ってのはかなり高度なレベルで、人間の体から不要なものを排泄しています。そのメカニズム全てを備えた人工腎臓を移植できる日も、そう遠くないかもしれません。
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