胎児に障害が生じるリスクがあるため、妊婦または妊娠を予定している女性は、抗うつ薬パロキセチン(商品名:パキシル)の使用を避けるべきとの米国産婦人科学会(ACOG)による警告が、同学会誌「Obstetrics & Gynecology」12月号に掲載された。
ACOGは、パキシル以外の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)または選択的ノルエピネフリン再取り込み阻害薬による治療についても、患者個別の配慮が必要と注意を喚起している。
今回の警告は、2つの研究に基づいたもの。第一の研究では、乳児の心疾患リスクが一般集団では1%であるのに対して、母親が妊娠初期にパキシルを使用した乳児では約2%であった。もう一方の研究では、妊娠3カ月までに母親がパキシルを使用した場合、乳児の心疾患リスクが1.5%であるのに対して、その他の抗うつ薬では1%であった。最もよくみられた障害は、心血管系の異常であった。
米国食品医薬品局(FDA)は、2005年9月に妊娠初期のパキシル使用に関する警告を発しており、同年12月には、パキシルの製造元グラクソ・スミスクライン社に対し、同薬の分類をカテゴリーCからDに変更するよう通達した。カテゴリーDは、妊婦を対象とする研究で胎児へのリスクが示されたことを意味する。パキシルを含めSSRIが新生児の禁断症状を引き起こすという別の報告もある。
ただしACOGは、妊婦のうつ病治療を中止するリスクも認めている。うつ病を放置すると、体重低下、アルコールおよび薬物依存、性感染症などのリスクがあり、いずれも母体および胎児の健康に影響をもたらす。妊娠適齢期の女性は大うつ病の有病率が高く、ACOGの推定によると、10人に1人が妊娠中または産後期に抑うつ症状を経験しているという。
妊娠する前に検討するのが理想的だが、妊娠の約半数は計画外のもので、妊娠してから治療について決定せざるを得ないことが多い。妊娠初期にパキシルを使用した女性は、胎児心エコーで心疾患の有無を調べることも検討すべきだという。いずれにせよ胎児の臓器が形成される妊娠初期にそれと知らずに過ごすのは非常に危険で、うつ病のような健康上の問題を抱える女性は、産婦人科医と相談の上で妊娠を計画することが大切だと専門家は述べている。
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確かにうつ病を放置するのも問題なんですよね。でもうつ病を治療するとしたら、薬物によるものが一番効果をあげられるわけで…。うつを安定させてから妊娠するというのが一番計画性のあるものですが、記事中にもありますように、「妊娠の約半数は計算外」だそうで。
パキシルは有効性があるとは思いますが、副作用などで色々叩かれてますね。うつ病は心の病ですが、うまいことその人に合う薬がみつかれば、結構改善するものです。妊娠中の治療は難しいとは思いますが、それが患者のニーズなのでしたら、応える道を模索せねばならないでしょうね。
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