損傷した脊髄に、カビの一種から抽出した物質を投与して、神経の再生を促し、運動機能の一部を回復させることに、慶応大の岡野栄之教授(生理学)らの研究チームが動物実験で成功した。
交通事故などによる脊髄損傷患者の治療薬の開発につながる成果として注目される。
複数の神経が束になっている脊髄は、切断から時間がたつと再生を阻むたんぱく質が増え、伸びて再生しなくなる。研究チームは、再生阻害たんぱく質のうち、「セマフォリン3A」に注目。この働きを邪魔する物質を探し出した。
脊髄損傷で後ろ足が麻痺したラットに、この物質を1か月間投与したところ、3か月後には神経組織が再生して部分的につながり、後ろ足の関節を自力で動かせるまで回復した。投与しなかったラットの足は動かない状態のままだった。
研究成果は医学誌ネイチャー・メディシン電子版に掲載された。
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投与するだけで神経細胞が繋がる夢のような薬。おそらく、切断されてから早い段階で投与すると劇的な改善が見られるのではないでしょうか。脊髄を再生するというより、脊髄再生を阻害する物質を阻害するといったほうが正しいですね。
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